研究課題/領域番号 |
18K18910
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
鷹尾 祥典 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 准教授 (80552661)
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研究分担者 |
村上 勝久 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 主任研究員 (20403123)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | 電気推進 / 電子源 / グラフェン / イオン源 / 超小型衛星 |
研究実績の概要 |
超小型衛星にも搭載可能なイオン推進機の飛躍的な性能向上には、元来小さい電子源(中和器)の更なる小型化と高効率化が不可欠である。本研究では、この電子源の抜本的な変革に注目し、正にバイアスされた電位面から電子放出が可能で低電圧でも高電流密度が得られるグラフェン電子源を利用する事で、電位構造が従来と異なる新しいイオン源の創出とともに超小型イオン推進機の性能向上を目指す。 2019年度は、既に高い電流密度を持つ電子源の素子をアレイ化することにより大電流化を図った。素子一つの面積、その素子内における電位降下、また、配線の面積などを考慮してアレイ化の最適化を行った結果、前年度の電子引き出し電圧および効率を維持したまま、3 mm角の電子源から最大6 mAの大電流を引き出すことが可能になった。この時の電子生成コストは 60 W/A弱であり、従来型電子源の半分以下となる省電力性も実現できた。 一方、イオン源においては、前年度同様に、従来のフィラメント熱電子源を用いたイオン源の改良を進めた。このイオン源の作製に当たっては、グラフェン電子源への置き換えを行う事を考慮し、従来のイオン源とは異なりイオン引き出しグリッド電極の近い側にフィラメント電子源を配置している。放電実験を重ねる中で、磁場強度を弱める方が放電しやすくなることが明らかになった。また、微小な空間を実験的に全て把握することは難しいため、放電特性を把握するためのプラズマ粒子計算(PIC: Particle-in-Cell)モデルの構築も行った。計算で得られたプラズマ分布によると、電子が磁場に強く拘束されており、プラズマ密度の局在化が生じやすい状況が明らかになった。これは前述の実験結果と整合しており、今後、磁場強度および分布の最適化を図り、所望のイオン源へと改良を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要で述べた通り、グラフェン電子源の大電流化およびイオン源の作製と数値解析モデルが構築できているため。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は以下の方法により研究を遂行する。 ①グラフェン電子源の耐久性向上: 小型イオンスラスタ等の中和用電子源としては既に十分な電子放出特性を備えているため、2020年度は長寿命化ならびに耐イオン衝撃性の向上を図り、イオン源にも利用可能な電子源の実現を目指す。 ②イオン源の放電特性解析とイオン推進機の作製: 実験とプラズマ粒子計算によるイオン源の放電特性を解析することで、イオン源の性能向上を図る。最終的には上記グラフェン電子源を利用したイオン源を作製し、グリッド電極を備えることで、電位構造が従来とは異なる新しい超小型イオン推進機を創出する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は当該年度予算総額の0.1%程度であり、実質的に計画通りの使用であるため、翌年度も当初計画通り使用を行う。
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