研究課題
超小型衛星にも搭載可能なイオン推進機の飛躍的な性能向上には、元来小さい電子源(中和器)の更なる小型化と高効率化が不可欠である。本研究では、この電子源の抜本的な変革に注目し、正にバイアスされた電位面から電子放出が可能で低電圧でも高電流密度が得られるグラフェン電子源を利用する事で、電位構造が従来と異なる新しいイオン源の創出とともに超小型イオン推進機の性能向上を目指す。2020年度までに機械式転写法によりグラフェン層の上に電子透過率の高い六方晶窒化ホウ素保護膜形成を実現できていたが、2021年度は化学気相成長法を用いることで保護膜の皺や破れを軽減する成膜方法を試行し、酸素プラズマ下における耐性を評価した。その結果、狙い通りさらに高い耐酸素性が得られる事が分かった。一方、イオン源においては、2020年度同様に従来のフィラメント熱電子源を用いたイオン源の改良を進めた。この際、微小な空間を実験的に全て把握することは難しいため、放電特性を把握するための3次元プラズマ粒子計算(PIC: Particle-in-Cell)を利用した。なお、このイオン源の作製に当たっては、保護膜付グラフェン電子源への置き換えを行う事を考慮し、従来のイオン源とは異なりイオン引き出しグリッド電極の近い側に電子源を配置し電位構造を反転させている。2020年度の磁場設計を踏まえて改良した磁場形状により放電室およびイオン引き出しのためのグリッド電極を作製した。静電プローブ診断を行った結果、中心へのプラズマの偏りが改善され、イオン引き出し実験においては加速電極へのイオンビーム損失が改善される結果となった。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
応用物理
巻: 90 ページ: 298~302
10.11470/oubutsu.90.5_298
http://www.takao-lab.ynu.ac.jp/