IKMTネットにより採集される魚類グループのうち、種のバリエーションが多かったハダカイワシ類を中心に、網膜total RNAをテンプレートにRT-PCRとRACEを行い、ロドプシン全長配列を決定した。得られた配列をアミノ酸に変換し、最大吸収波長(λmax)に影響を及ぼすキーサイトにおけるアミノ酸置換を解析することにより各魚種の推定λmaxを求めた。 実験には、系統による遺伝子変異について検討するため、熊野灘海域で採集された標本の他、南極海で実施した深海トロールにより獲得された標本も加え、2亜科11属を用いた。ハダカイワシ類におけるロドプシン遺伝子に関しては、ゲノム上に複数のコピーが存在することが報告されているが、total RNAをテンプレートとした本解析では1魚種から1種類のロドプシン遺伝子が単離された。塩基配列の全長は属により異なり1035~1053 bpの範囲であり、これらは345~351残基のアミノ酸に翻訳された。アミノ酸配列の相同性は83~88%であり、近縁種のロドプシンとしては比較的変異が起きていることがわかった。アミノ酸キーサイトの変異から推定されたロドプシンのλmaxは471~489 nmの範囲であった。Yokoyama et al. (2008) に基づくと、これらは深海型ロドプシン(約480~485 nm)と中深層型ロドプシン(約490~495 nm)に分類された。
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