我々はゲノム編集技術を活用し、ブルーム蛋白に対するインヒビターと後から抜き出し可能なトランスポゾンベクターだけを用いて、『ゲノムに全く望まない変異を与えず』ヒトiPS細胞のHLA座位に関してホモ接合体を作製する手法を開発した。この技術でPCT国際出願を行い、すでに国際予備審査で特許性が認められている(現在、各国移行中)。 本技術はGWASにより割り出された潜在的な病因領域の疾患との相関の裏付けに役立つ事も期待される。GWASによって抽出される病因領域は統計的データであり、実証が必要とされるものも多い。病因領域のホモ化株と、元株との比較により病因因子と表現型の相関が実証されることの意義は大きい。さらには本技術によって作出される病因領域がホモ化された細胞株と、アイソジェニックなコントロール細胞との比較による、疾患iPS細胞を用いた画期的な創薬モデルの作出も期待される。 我々は、アルツハイマー型認知症発症の主要な病因因子であることがGWASの結果からあきらかとなっているAOPE遺伝子領域(19番染色体・長腕)において、本技術を用いて効率よく相同組換えを生じさせる系を完成した。今後、この実験系を用いて疾患モデルiPS細胞を作出し、アルツハイマー型認知症における、創薬モデルの開発を行ってゆく。
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