研究課題/領域番号 |
18K19505
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
青木 正志 東北大学, 医学系研究科, 教授 (70302148)
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研究分担者 |
割田 仁 東北大学, 大学病院, 助教 (30400245)
鈴木 直輝 東北大学, 大学病院, 助教 (70451599)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | 封入体筋炎 / 筋収縮 / 筋芽細胞 / プロテアソーム |
研究実績の概要 |
封入体筋炎 (sIBM)は中高年にみられる慢性進行性の難治性筋疾患である。sIBMの骨格筋ではアルツハイマー病や筋萎縮性側索硬化症 (ALS)などの神経変性疾患で蓄積するアミロイドbetaやTDP-43・FUSなどの異常凝集体が見られ筋における変性疾患とも考えられている。一方、我々の疫学調査によりsIBMでは一般的に認知症が見られないことがわかった。すなわち骨格筋では中枢神経での凝集体形成を肩代わりしている可能性があるが、なぜsIBMで骨格筋のみに異常蛋白凝集が起こるかは不明である。蛋白分解能低下や加齢・持続筋収縮刺激がsIBMの病態の背景にあるという仮説の下に、異常蛋白凝集を評価しうる病態モデルを確立する。 本研究ではヒトsIBMの骨格筋から樹立した筋芽細胞を用いた。封入体筋炎疑い患者から筋生検時に細胞を回収し、4ラインをストックした。長年の筋収縮の持続を再現する電気収縮培養系を用いてヒト骨格筋に細胞ストレスを負荷し、収縮ストレス前後での細胞における遺伝子発現に関してRNAシークエンスで解析を行った。現在、病態および収縮ストレスと関連する遺伝子リストを解析中である。また、細胞における一分子ナノイメージングにて、凝集体の成分とされるTDP-43などを標識し、収縮培養前後での凝集体形成の有無を評価している。また、蛋白質凝集に重要なプロテアソームを筋芽細胞において欠損させたモデル動物の解析によりp53が筋芽細胞プールの維持に重要であることを明らかにし、報告した(Kitajima et al. Stem Cell Reports 2018)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、患者由来細胞のストックを順調に進めており、また収縮培養前後でのRNA抽出を行いオミックス解析まで到達している。さらにイメージングの標識も行い、2019年度に向けて評価系を確立しつつある。さらにプロテアソーム欠損筋芽細胞を持つマウスモデルの報告も完成させることができ、細胞培養系から得られた結果を個体レベルで解析するツールも準備しつつある。一方でプロテオームやエクソソーム解析にはまだ着手できていないが、24wellフォーマットでの収縮培養が可能となってきており、2019年度には検討を進めたい。
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今後の研究の推進方策 |
一分子ナノイメージングによる凝集蛋白標識により新規に見出した収縮培養関連遺伝子を可視化し、骨格筋特異的な凝集体形成の過程を観察・比較解析していきたい。また、凝集体形成に重要な蛋白分解系の阻害や収縮培養系を用いて細胞にストレスをかけ骨格筋特異的に凝集体形成を再現するモデルを作成していく。エクソソ-ム分泌小胞の解析方法についても検討する。24/96ウェルフォーマットの電気収縮培養系を作成し異常蛋白凝集体形成やエクソソームによる変化を1分子イメージングにより評価しうる薬剤スクリーニング系へとつなげていきたい。
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