研究課題/領域番号 |
18KK0022
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
菊田 悠 北海道大学, スラブ・ユーラシア研究センター, 助教 (30431349)
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研究分担者 |
今堀 恵美 東海大学, 文化社会学部, 講師 (50600821)
宗野 ふもと 筑波大学, 人文社会系, 特任研究員 (30780522)
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研究期間 (年度) |
2018-10-09 – 2024-03-31
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キーワード | 手工芸 / 伝統 / ウズベキスタン / 地域開発 / 職人 / 陶業 / 刺繍業 / 毛織物業 |
研究実績の概要 |
本研究では、現地の陶業・刺繍業・毛織物業を通じた人類学的研究に携わってきた日本側研究者が、現地の経済学者や芸術学者、職人や住民と協力して20世紀以降の手工芸史を再構築し、わざや製品の変遷と伝統を巡る諸アクター間の力学、手工芸がいかに地域開発に結び付き得るかを共同研究し、成果を「守るべき伝統」の合意形成とブランド化戦略の提示等により現地に還元することを目的としている。 初年度となる本年度は日本側研究者が、ソ連時代以降の陶芸・刺繍業・毛織物業の変遷について共通の問題意識や特徴を整理し、ウズベキスタン側研究者と相談しウズベキスタン研究者側の資料(ソ連の軽工業政策や地方経済、手工芸の製品等に関して)と照らし合わせて共同で疑問点を解決し、ソ連時代以降の手工芸史の再構築を進める作業をおこなった。それにより、手工業の中でも軽工業的な陶業や絨毯業は、ソ連時代に各地で集団化が進められることが多かった一方で、集団化による生産物が需要と合わず、地域的な生産が衰退し特定の家族内でのみ家業として受け継がれる地域も出現したこと、女性が家庭内で行うものとされてきた刺繍業に関しては地域によって集団化あるいは家庭内での趣味化に明確に分かれたことが明らかになった。 ソ連時代にどのような集団化が進められたかという点は、ウズベキスタン独立後の手工芸の形態に今なお多大な影響を及ぼしており、地域や業種ごとの手工芸の現れ方の差異に直結している重大なポイントである。今後は同業種内でなぜどのように集団化の実現に地域差が生まれたのか等の点を解明すべきことが明確となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はおおむね順調に研究課題を推進していると評価する。その理由は、研究分担者の間でメールや会議を通じた意思疎通を図り、当該研究の目的を共有することが出来、当面の目標や課題も明らかにし共有出来ているからである。具体的には各研究者のこれまでの手工芸に関する研究成果を整理し共有して、数時間にわたる議論をおこない、互いの研究分野に対する理解を深めるとともに、来年度に各自が取り組むべき課題を明らかにした。また、研究の促進のために必要な環境の整備も進めることが出来、来年度からの本格的な調査の準備が整った。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は、計画に沿って順調に研究課題を推進する見込みである。研究代表者はウズベキスタン国立経済大学およびウズベキスタン芸術アカデミーを訪問し、ウズベキスタン国立経済大学のイスラモフ教授および同国芸術アカデミーのカザエワ教授らと共同で、ソビエト連邦時代から現在に至るウズベキスタンの陶業をはじめとする手工芸の変遷に関する資料を比較照合する。また、両氏およびウズベキスタン職人組合の協力を得つつフェルガナ地域における手工芸の調査を行う。調査の内容は、ソ連時代以降の製品・生産体制・技法の変遷、伝統とされる要素の変遷、伝統に関わる人々の言説、観光業との関係、2017年以降の手工芸振興策の影響等である。さらに秋に予定されている手工芸のウズベキスタン全国大会にてウズベキスタン陶業について解説した自著を紹介しプレゼンテーションを行う。これにより手工芸を通じた地域振興というコンセプトを多くの手工芸者や政府関係者に広める効果が期待される。 研究分担者はこれまでに収集した資料を分析する作業を主に行うが、ウズベキスタンへの渡航調査も予定している。その際はソ連時代以降の製品・生産体制・技法の変遷、伝統とされる要素の変遷、伝統に関わる人々の言説、観光業との関係、2017年以降の手工芸振興策の影響等を調査する。また、成果論文の英語校閲や日本国内での打ち合わせ会議をおこない、研究課題を推進していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者2人が今年度は別の助成金を用いて研究を行っており、本研究費用をあまり用いなかったために次年度使用額が生じた。翌年度は研究分担者の1人は別の助成金がなく、研究代表者も現地調査と現地での発表活動を予定しているため、順調に本研究費用を使用する計画である。
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