研究課題/領域番号 |
18KK0029
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
山崎 孝史 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 教授 (10230400)
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研究分担者 |
花松 泰倫 九州国際大学, 法学部, 准教授 (50533197)
八尾 祥平 上智大学, 総合グローバル学部, 研究員 (90630731)
福本 拓 南山大学, 人文学部, 准教授 (50456810)
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研究期間 (年度) |
2018-10-09 – 2023-03-31
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キーワード | 東シナ海 / 島嶼 / トランスボーダー / 地政学 / 政治地理学 |
研究実績の概要 |
本年度は、昨年度に引き続き、合同研究会を通して、国境離島の性格を国境管理・領土防衛政策の強化(再領域化)と緩和(脱領域化)のプロセスから便宜的に二分し、両プロセスの並存と相互作用を意識しながら、本年度に設定した二つの課題に向けた研究を実施した。 一つ目は「再領域化のプロセス」であり、中心―周辺関係、すなわち国家による辺境の従属化や軍事化は島嶼内においてどのように強化されているか。それは島嶼の政治的環境や社会経済的構造とどう関わり、それらをどのように変化させているかを、後述する国際会議の一環として実施した沖縄巡検において、調査・確認した。 もう一つは「脱領域化のプロセス」であり、トランスボーダーな関係、すなわち観光や文化・経済活動を通した越境交流はどのように展開しているか、それは島嶼の政治的環境や社会経済的構造とどう関わり、それらをどのように変化させているかについて、後述する国際会議内における国際共同研究者の発表を通して理解した。 研究代表者は、国際共同研究者の協力のもとに、11月26日から28日にかけて大阪市立大学学術情報総合センターにおいて、「国家領域性の変容とトランスボーダー地政学の出現」をテーマの一つとする、「第4回オルタナティブ地理学東アジア地域会議ジオポリティカルエコノミーワークショップ」を開催した。東アジア内外の13の国と地域から40人以上が参加し、本計画のテーマを中心に活発な議論が展開された。その成果は現在Taylor & Francis社の国際学術誌"Geopolitics"の特集として公開できるよう準備している。また、研究分担者と共に執筆した『現代地政学事典』(丸善出版)が令和2年1月に刊行された なお、これらの事業を実施していくために、研究員一名と研究補佐2名を雇用した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の最大の目標であった、国際共同研究者を招いての国際会議を無事開催することができ、その成果も国際公刊の準備が整いつつある。対して国内研究分担者との研究交流が必ずしも十分でなく、中心メンバーとの共同調査の実施を次年度以降の課題としたい。
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今後の研究の推進方策 |
あくまでも新型コロナウィルスの感染が東アジアで終息するという前提のもと、令和2年度において、国境離島の性格を国境管理・領土防衛政策の強化(再領域化)と緩和(脱領域化)という両プロセスの並存と相互作用を意識しながら、理論的視角を踏まえて、実態調査を進める。各研究分担・国際共同研究者は各自の役割に沿って、選定された島嶼地域でそれらのプロセスがどのように発現し、島嶼社会を構成・維持し、変容させているかを明らかにする。各プロセスでの調査にはもう一方のプロセスの並存と作用にも十分留意する。 プロセス別の研究テーマと担当者は以下の通りである。 *再領域化のプロセス:琉球諸島(日本への従属と米軍・自衛隊駐留=山﨑)、馬祖列島(台湾島向け軍事ツーリズム=Hsu)、済州島(半島との関係と海軍基地建設=Chi)、西海五島(朝鮮半島情勢と軍事化=Park) *脱領域化のプロセス:対馬列島(釜山との越境交流=花松)、琉球台湾関係(技術移転と移民=八尾)、金門島(厦門との越境交流=Liu)、済州島(対日移民=福本、中国人観光の増加=Chi) なお、本年度に研究代用者が出席予定していた4月の米国デンバーでの全米地理学者協会年次大会、トルコ・イスタンブールでの国際地理学会議はいずれも中止ないし延期されており、国際会議への出席は特に計画していない。但し、研究分担者を中心にテレビ会議システムを用いた研究会を開催し、これらの機会において、各研究分担・国際共同研究者による研究成果を確認し、情報交換を行うとともに、研究の洗練を図っていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
開催した国際会議における支出について、参加者負担にした部分があったため、想定額を下回った。また、研究分担者二名がほとんど分担金を執行しなかったため、次年度使用額が発生している。当初は本年度4月と8月に予定されていた米国とイスタンブールでの国際会議出張での執行を予定していたが、新型コロナウィルスの拡大により中止ないし、延期されたため、研究員の更なる雇用や国内出張などに振り替える予定である。しかしながら、国内調査の可能性も不確定であるので、現時点で相応額の執行を十分に計画できない。年度内に事態が改善されるならば、適切な対応策を立て、早急に執行を進めたい。
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