研究課題/領域番号 |
18KK0071
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
大鹿 健一 学習院大学, 理学部, 教授 (70183225)
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研究分担者 |
北山 貴裕 東京大学, 大学院数理科学研究科, 准教授 (10700057)
河澄 響矢 東京大学, 大学院数理科学研究科, 教授 (30214646)
山崎 玲 (井上玲) 千葉大学, 大学院理学研究院, 教授 (30431901)
宮地 秀樹 金沢大学, 数物科学系, 教授 (40385480)
久野 雄介 津田塾大学, 学芸学部, 教授 (80632760)
山田 澄生 学習院大学, 理学部, 教授 (90396416)
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研究期間 (年度) |
2018-10-09 – 2024-03-31
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キーワード | Teichmuller空間 / Thurston計量 / 双曲構造 / Finsler計量 |
研究実績の概要 |
依然コロナ禍の影響があったが,今年度は,大鹿,宮地,山田,北山がStrasbourg大学との共同研究を行うことができた.2022年6月に山田,大鹿がSeteにおいてPapadopoulosと,10月に北山がStrasbourgでGuichard, Fockと,11月にInstitut de Henri PoincareとStrasbourgにおいて大鹿,宮地がPapadopoulosと,2023年2月から3月にStrasbourgにおいて大鹿がPapadopoulos及びSaglamと共同研究を行った. 大鹿とPapadopoulosの共同研究は,Teichmuller空間の(複数の)Finsler距離に関するものである.研究の対象としているのは,Thurstonの非対称距離と呼ばれるものと,今回初めて研究の対象となっているearthquake距離と呼ばれるものである.1つ目の距離についての研究は,清華大学のHuang氏も加えた3人の共同研究で,この距離が余接空間の単位球に導く凸体の構造を分析することにより,距離の持つ無限小剛性を示し,さらに距離の局所構造についてのより深い理解を得ることができた.一方2つ目のearthquake距離については,Pan氏も共同研究に加え,Thuston距離との間にある双対性を示すと同時に,Weil-Peterssonノルムの間に成立する不等式を与えて,その結果として距離の非完備性を証明した. 宮地,大鹿とPapadopoulosはTeichmuller距離に1次微分形式を加えて得られるTeichmuller-Randers距離の研究を行った.この構成はTeichmuller円板上ではトーラスのTeichmuller距離とThurston距離の間の内挿に対応するものであるが,Teichmuller空間全体で定義できることを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度前半はフランスのコロナの状況がまだ不安定で,海外出張が容易ではなかったが,後半を中心に,大鹿,宮地,北山,山田がフランスに出張し共同研究を進めることができた.研究成果は全てTeichmuller空間に関わるものであるが,そのFinsler距離に関わるもの,Funk-Hilbert距離に関わるもの,3次元多様体との関連についてものなど多彩な方面にまたがっている. さらに双方の研究代表者である大鹿とPapadopoulosは日仏双方での共同研究グループの組織を行いながら研究を進め,「In the tradition of Thurston」という論文集をSpringerから出版することを続けている.本年度は第2巻の刊行を行い,さらに第3巻の編集を進めている.
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今後の研究の推進方策 |
2023年度には,今年まで思うようにフランスへの出張ができなかったメンバーも含めて,さらにStrasbourg大学との共同研究を進める.大鹿,宮地,山田,久野はすでにStrasbourgへの出張予定を立てている.研究内容としては,大鹿,宮地はPapadopoulosとのTeichmuller距離の変形の問題,多角形の平坦距離についてのThurston距離の研究を続ける計画である.山田はPapadopoulosと共同で,Hilbert距離と一般相対論との関連についての研究を進める. また大鹿とPapadopoulosはIn the tradition of Thurstonの第3巻の編集を続けるとともに,第4巻について,著者の選定を始める.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響により,フランスへの出張を計画のうちいくつかは実際に渡航が不可能であった.そのため研究計画の一部を次年度に延期する必要が生じた.2023年度はこれらの実現できなかった部分の研究を遂行することにより,本計画を完成させる予定である.すでに大鹿,山田,宮地,久野のメンバーは具体的な出張計画を立てている.
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