研究課題/領域番号 |
18KK0181
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
山崎 晃司 東京農業大学, 地域環境科学部, 教授 (40568424)
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研究分担者 |
釣賀 一二三 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 産業技術環境研究本部 エネルギー・環境・地質研究所, 研究主幹 (50287794)
小池 伸介 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (40514865)
後藤 優介 ミュージアムパーク茨城県自然博物館, 資料課(兼務), 学芸員 (20574312)
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研究期間 (年度) |
2018-10-09 – 2024-03-31
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キーワード | ツキノワグマ / ヒグマ / ロシア沿海州 / 温暖化 |
研究実績の概要 |
ロシア沿海地方は,大型森林性哺乳類であるツキノワグマとヒグマが同所的に生活する世界でも極めて希な地域として特徴付けられる。植物食により適応したツキノワグマと,強い雑食性を示すヒグマがどのような生息環境選択と種間関係を保つかは極めて興味深い研究課題ながら,その実態はまだほとんど明らかにされていない。 このような生態的特徴を持つ沿海州であるが,近年の気候変動(温暖化)により,これまで同地に接近することのなかった台風が,この10年ほどの間に度々上陸して,森林被害を与えている。2016年夏には,北海道を通過した大型台風が上陸して,風倒木の発生,地形の侵食や崩壊が森林の極めて広い範囲で認められた。すでに構築されている日露の国際ネットワークを用いて,森林被害(生息環境の広範な改変)がクマ類などに与える影響を評価すると共に,北方原生林での大型野生動物の生態のモニタリング体制の確立を長期的目標とする。 2022年度の研究は,新型コロナの影響がようやく沈静化したのも束の間,ロシアによるウクライナ侵攻により,日本は非友好国としてリストアップされたため,2021年度に引き続き停止した。過去に収集したクマ類2種のGPS行動軌跡を深層学習(Deep Learning)による解析を進め,両種の移動パターンの相違を検討したものの,現地の教師データが不足しており,現在までのところ考察できる相違を抽出するには至っていない。また,両種の利用クラスターで採取した糞内容物の分析と,糞表面に付着した代謝物の遺伝子解析による種判定を終えたが,ロシア側研究者との情報共有が停滞しており結果の考察には至っていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
血液や体毛などのサンプル輸入に関するロシア側のCITES許可は下りる見通しがない。そのため,日本国内での解析見込みは立っていない。 2019年度に発生した現地調査にかかる許可の遅延,台風による調査地の被害復旧(道路や橋など)の遅滞,2020年度から2021年度の新型コロナの影響,そして2022年はウクライナ侵攻により現地調査は実現していない。現在,ロシア側共同研究者の一部はアメリカに避難しており,在ロシアの研究者へは電子メールなどによる連絡も相手側(受信者側)への配慮から様子を見ている状態である。
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今後の研究の推進方策 |
研究に大きな遅延が起こっているが,2022年度から先延ばしされた当初計画として以下がある。助成期間の1年間の延長を行ったが,ウクライナ侵攻に和平が訪れない限り事態の大きな改善は望めず,2023年度の調査計画は,再びすべてキャンセルされる可能性が高い。その場合は,これまでの断片的なデータの取りまとめに挑戦して,できるだけ多くの本数の論文を発表する予定である。 1. 行動面での環境利用:追跡事例がないメスのヒグマおよびツキノワグマを各2頭以上捕獲し,GPS首輪の装着を行う。また,環境の変化が,種間関係に与える影響評価のために,両種の種間関係を接近検知センサーで計測する。測位された位置情報をもとに、実際の両種の集中活動場所の現地調査を行い、どのような環境要求性を有しているかの検討を行う。 2. クマ類の食性面での環境利用:景観構造の影響を明らかにするために,両種の食性解析を複数の手法を用いて行う(e.g.,フン分析法,体毛安定同位体分析など)。糞の採集は,GPS追跡個体の集中利用域の踏査により行う。体毛については休息場所からの採集を行う。体毛と糞は,遺伝解析により,種および性別の判別を行う。体毛の窒素および炭素の安定同位体比からは,食性履歴をSIARモデルにより推定する。 3. 生息環境現状(森林被害)の把握と生息環境利用モデルの検討:衛星画像と現地踏査を用いて,台風による森林被害の現状を可視化する。その上で,実際のクマ類の環境利用を重ね合わせて,その環境選択性をモデル化する。また,保護区事務所が実施予定の,有蹄草食獣の分布現況調査結果を併せて,クマ類への生息環境変化の影響を評価する。 4. クマ類の生態系エンジニアとしての役割を評価するため,ベッディングサイト植生の経年変化を追跡調査して,マイクロハビタットの質の改変を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ロシアによるウクライナ侵攻により,研究計画が大きく遅延しているため。
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