研究課題/領域番号 |
18KK0190
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松脇 貴志 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (20447361)
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研究分担者 |
藤田 直己 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任助教 (10554488)
藤澤 彩乃 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任助教 (10624885)
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研究期間 (年度) |
2018-10-09 – 2021-03-31
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キーワード | mPGES-1 / LPS / 低体温 / インターフェロンガンマ |
研究実績の概要 |
哺乳類の体温は生体の恒常性にとって最も重要な因子の一つであり、中枢神経系によって一定範囲の温度に保たれている。視床下部視索前野は発熱中枢として知られ、プロスタグランジンE2(PGE2)がこの部位に働くことで、体温の上昇が引き起こされる。一方で体温低下の機構は依然として不明な点が多い。我々は過去に、野生型マウスに体温上昇を引き起こす量の細菌毒素をPGE2合成酵素(mPGES-1)欠損(KO)マウスに投与すると、発情前期の雌特異的に体温が逆に一過性の低下を呈することを見出した。そこで我々は脳内には発熱中枢だけではなく体温低下中枢が存在するという仮説を得て、本研究ではスウェーデンリンショーピン大学のBlomqvist博士らと協力してこの制御機構の解明を目指している。 平成30年度の研究で低体温を示した個体の視床下部での遺伝子発現についてRNAシークエンスとqPCRによる網羅的解析を行ったところ、低体温を呈した個体でのinterferonγ(IFNγ)シグナリングの強い活性化が観察された。 そこで令和元年度では、IFNγの受容体について松脇班では全身性のKOマウスの購入と繁殖、Blomqvist班では組織特異的なKOマウスの作出をおこなった。さらに、野生型マウスにおいて感染性の低体温を引き起こす条件を検討した。その結果これまでの実験で用いていたLPSの100倍量を投与することで、低体温を誘起することができた。現在はこの低体温時の脳内遺伝子発現状態を解析・mPGES-1 KOマウスでの発現パターンとの比較を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本でのIFNγ受容体の全身性KOマウスは順調に繁殖が進み、コロナウイルス流行による大学の実験規制が解除され次第すぐに体温測定を始められる状態にある。 スウェーデンでの組織特異的KOマウス作出も軌道に乗っている。Blomqvist班は一度に30個体近くの動物の体温を測定できる大規模な体温測定施設を有しているため、今年度は飛躍的な実験の進展が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
日本とスウェーデンそれぞれで、IFNγ受容体の全身性、組織特異的KOマウスを用いて感染性の体温変化を観察する。 さらに、KOマウスで見られた体温低下が普遍性をもつかを検討するため、低体温時の野生型マウス脳内の遺伝子変動状態も観察し、KOマウスのそれと比較する。
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次年度使用額が生じた理由 |
Blomqvistグループで作製中のインターフェロンガンマ受容体KOマウスが実験に使用可能となるのが令和2年度のため、この実験に研究費を重点的に使用するため。
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