研究課題/領域番号 |
18KK0235
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研究機関 | 国立研究開発法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
塩谷 文章 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, ユニット長 (10627665)
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研究分担者 |
中田 慎一郎 大阪大学, 高等共創研究院, 教授 (70548528)
安原 崇哲 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 助教 (90757056)
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研究期間 (年度) |
2019-02-07 – 2023-03-31
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キーワード | DNA複製ストレス / ATR / KRAS / PrimPol / ゲノム不安定性 / ヘテロクロマチン |
研究実績の概要 |
がんドライバー遺伝子の活性化は、異常なDNA複製ストレスを誘発し、ゲノム不安定性を誘発する。本研究ではKRASG12V肺腺がんモデルを作成したところ、DNA複製ストレス応答の中心的な役割を果たすATRの発現上昇がKRASG12Vによって誘導される形質転換において必要十分条件を満たす結果をえている。本年度は、KRASG12VによるDNA複製ストレス耐性獲得過程におけるATR発現上昇が、ATR発現を抑制するmiR-158がKRASG12Vによって発現抑制されることやATR遺伝子の増幅によることを明らかにした。またKRASG12Vによる転写依存的なH3K27me27レベルが上昇しヘテロクロマチンを誘発しDNA複製ストレス要因となることを明らかにした。興味深いことにH3K27me3が関連するヘテロクロマチン近傍にはATR-PrimPol経路依存的な再プライミングによるssDNAが多発すること、さらにはATRの発現上昇によって促進されたKRASG12V誘導形質転換細胞(Replication stress tolerant cell: RSTC)においてmicronucleiが上昇することや、全ゲノム解析から、SVやSNV頻度の上昇に加えてwhole genome duplication(WGD)が生じることから、ATR高発現によってDNA複製ストレス耐性を示し生存したRSTCは、同時にゲノム不安定性を獲得することが示唆された。最後にTCGA及びNCCJにおけるLUACコホートにおいてKRAS変異LADCにおけるATR高発現は有意に予後不良を示すことが明らかとなった。以上よりATR-PrimPol経路はKRAS変異による複製ストレス耐性を制御し、ゲノムの不安定性を蓄積しながらクローン拡大すること、更にはATR高発現がKRAS変異肺がんの悪性化と関連することが明らかとなった。
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