研究課題/領域番号 |
18KK0261
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
床次 眞司 弘前大学, 被ばく医療総合研究所, 教授 (80247254)
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研究分担者 |
柏倉 幾郎 弘前大学, 保健学研究科, 教授 (00177370)
古川 雅英 琉球大学, 理学部, 教授 (40238671)
工藤 ひろみ 弘前大学, 保健学研究科, 助教 (50552684)
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研究期間 (年度) |
2018-10-09 – 2021-03-31
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キーワード | インドネシア / 高自然放射線地域 / 低線量 / 慢性被ばく / ラドン / 血液 |
研究実績の概要 |
本研究は、福島第一原子力発電所以降、我々が直面している低線量慢性被ばくの人体影響を明らかにするため、インドネシア・スラウェシ島の高自然放射線地域で生活する住民を対象とした包括的な被ばく線量評価とその被ばくがもたらす人体での生体成分レベルとの関連性を見出すことを目的としている。 本年度は、対象地域の家屋内にパッシブ型ラドンモニタを設置し家屋内のラドン濃度を評価した。特に高いラドン濃度であった家屋敷地内において、家屋内外のラドン濃度や被ばく線量に大きく寄与するその子孫核種の日内変動も得た。その結果、予備調査と同様に家屋内外のラドン濃度は同レベルであり、かつ、国際放射線防護委員会の参考レベルを十分に上回るレベルであることが明らかとなった。ラドン濃度とその子孫核種濃度の同時測定によって、ラドンの吸入被ばくによる線量評価に必要な平衡係数は、一日でも大きく変動することが明らかとなった。つまり、原子放射線の影響に関する国連科学委員会が報告し、一般に利用されている代表値は、当該地域の住民の線量評価において適さず、継続的な調査によって十分に議論すべき課題であることが明らかとなった。 飲用水中のラドンの経口摂取に伴う線量評価のために、本年度は7家屋から採水した。その結果、全ての家屋の飲用水中のラドン濃度は、米国環境保護庁が提案した最大汚染レベルの代替値を超えていた。住民への聞き取り調査の結果、当該地域では煮沸をすることなく、水を直接摂取することが明らかとなった。さらに、一部の家屋から食事試料を提供してもらい、放射性核種の分析を行っている。 対象地域住民からの採血では、血球の保存状態を最適に保つために抗凝固剤や血液保管による条件の検討が必要となる。そこで、抗凝固剤や血液保管による血球数の変動やリンパ球のダメージに関する検討を行い、最適な血液の取扱い方法を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
物理線量評価のための基礎データの取得に関しては、現地の研究者や住民の協力が得られているため順調にデータが取得できている。 生物影響評価に関しては、現地で実施する住民の採血後のサンプル処理や輸送のための基礎データを取得するとともに、その輸送手続きも順調に進んでいる。また、現地の研究者を本学に招へいすることで採血後の血液の処理や分析に関するトレーニングを実施し、十分なスキルを身につけさせた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、家屋内外のラドン濃度の調査対象家屋や地域を増やすとともに、ガンマ線スペクトロメータを用いて、現地で空間線量率や天然放射性核種濃度の測定を行う。さらに、ラドンの被ばくに大きく寄与するラドンの子孫核種(放射性微粒子)の測定や、その粒子サイズの分布も取得することでより高度な線量評価につなげる。 さらに、高濃度化メカニズムを検討するため、ラドン濃度の高度分布や散逸率の評価を実施する。 また、飲用水や食事試料のサンプル数を増やし、当該地域の経口被ばくに関する基礎データを充実させる。経口摂取にともなう、住民の線量分布を明らかにするとともに被ばく低減に関する手法について検討する。 生物影響評価に関しては、現地機関の協力を得て、放射線レベルが異なる地域の住民に対して採血を行い一般的な血液検査を実施する。それに加えて、エキソソームやmiRNA等の発現に関するデータ収集・解析を行う。 これらの調査は世代・性別ごとに実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度に計画した現地調査のための旅費の一部や謝金は、自助努力により学内予算等の獲得ができた。次年度以降は、調査対象地域や家屋数を増やすため、現地調査に係る費用として使用予定である。
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