研究課題
腸管感染性病原体の真の感染循環を明らかにし、効率的なサーベイランスの構築を目的とする。そのため、不顕性感染も把握できると考えられる下水をターゲットとした病原体調査を大阪・札幌で実施した。ノロウイルス は前年度、前々年度に比し、検出される遺伝子型数及び検出率が低下した。本年の背景としてCOVID-19の蔓延により、社会活動の制限があり、大阪における感染性胃腸炎患者報告数は前年度比57.6%減、ノロウイルスの検出数は56%減少した。人の移動制限、施設の利用制限などは感染伝搬に大きな影響を与え、不顕性感染伝搬にも影響を与えたことが推察された。ディフィシル菌についてはwebriboデータベースを用いたPCRリボタイピング法を合計116株について実施した。さらにPOT法とslpAシークエンス 法を実施した。この結果、リボタイプ017 (31株)、 002 (23株)、 018 (18株)の3つの型で半数以上を占め、集中して分離される期間がそれぞれのリボタイプごとに1~2回あった。このことから、地域に定着している菌が流行を繰り返す可能性が示唆された。一方で、3つの型とは異なる菌についても解析が必要と考えられた。新型コロナウイルス(SARS CoV-2)は呼吸器疾患の原因ウイルスであるが、腸管で増殖し下水に含まれるため、本研究が先行的役割を果たし新たな研究につながった。海外の研究グループと共同で、下水中のSARS-CoV-2に関する世界初の総説論文を発表し、COVID-19の流行状況を把握する上での下水疫学調査の有用性を提唱するとともに、北米初となる下水からのSARS-CoV-2 RNAの検出に成功した。また、世界的なノロウイルス疫学調査において小児だけでなく下水についてもエントリーできる仕組みにつなげることができた
3: やや遅れている
コロナウイルス感染症対応のため、本研究の計画が予定通り実施できなかった。一方で、本研究が基盤となり新たな研究へとつながった。
下水試料におけるノロウイルスの次世代シークエンス解析データは得られてきているが、新型コロナウイルス感染症対応により停滞している。COVID-19と同じ呼吸器疾患の減少は報告されているところであるが、その他の感染症にも影響がでている。世界的な疾患の流行とその長期化、マスク手洗い励行がその他の感染症にどのような影響を与えたのか、どのような対策が有効であるのかについて、患者報告数ベースおよび下水中の病原体解析によって解明していきたい。患者から検出された株との遺伝的相関性を検出年と組み合わせて解析することで、流行株の予測を行う計画であるが、感染性胃腸炎の感染伝搬が下がった影響があるのかについても注視していきたい。ディフィシル菌のPCRリボタイピング法の実施体制が確立できたことから、国内におけるディフィシル菌流行実態の解明に用い、サーベイランスへの活用を提案する。現在、菌株の関係をより詳細に比較するために、MLVA法を実施する体制を構築中である。3つのリボタイプ型の菌に対してMLVA法を実施して、地域内の流行についてより詳細に考察する予定である。
衛生研究所としてコロナ検査対応のため、研究実施が計画通りに進めることができず、また国際学会を含む学会への参加ができなかったため。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) 備考 (2件)
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