研究課題/領域番号 |
18KK0288
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
細見 正明 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 名誉教授 (90132860)
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研究分担者 |
利谷 翔平 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80725606)
佐久間 一幸 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 福島研究開発部門 福島研究開発拠点 福島環境安全センター, 研究職 (90773474)
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研究期間 (年度) |
2019-02-07 – 2021-03-31
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キーワード | 節水イネ / 水管理 / メタン / 亜酸化窒素 / ヒ素 / カドミウム / モデル |
研究実績の概要 |
9/5から9/8まで、上海農業科学院の実験圃場にて、打ち合わせと情報交換を行った。また、節水イネ(H73)を異なる水管理で栽培した際の温室効果ガス放出の削減効果を評価した。湛水栽培と比べて、間断灌漑でメタン(CH4)放出量は55%削減されたことに対して、干ばつ管理ではCH4放出量が91%削減されたことを確認できた。また、土壌間隙水の重金属濃度を測定した結果、湛水栽培で間隙水のヒ素(As)およびカドミウム(Cd)濃度が一番高いことが分かった。 節水管理により土壌が大気に暴露されると、亜酸化窒素(N2O)放出量が増加すると考えられる。N2Oを削減するための方法として、炭化物の施用を検討した。異なる炭化温度で調製したもみ殻炭化物を混合した土壌をバイアルに充填し、N2O放出量を評価した。その結果、炭化物無施用土壌と比較して、炭化温度が低い炭化物の施用はN2O放出量を増加させた。一方、炭化温度が高くなるとN2O放出量が減少することが分かった。 節水イネ栽培においてどのような管理方法が温暖化への影響やコメへの有害金属蓄積による健康影響を低くできるかを評価する方法について検討した。水田で問題となる温室効果ガス(CH4やN2O)や有害金属(AsやCd)は、温室効果や毒性が異なる。そのため、個々の温室効果ガス放出量はCO2等量、コメ中の個々の有害金属濃度はハザード指数という指標に変換し、その合計値を栽培方法間で比較評価する方法を検討した。水稲を異なる水管理でポット栽培した試験の結果を用いて、CO2等量およびハザード指数を評価したところ、湛水管理が最も低くなると評価された。 DNDCモデルを用いた水田モデルの予備的検討のため、仮想的な水田を対象に、温室効果ガス放出量および土壌中の環境条件に関する解析を行い、本モデルの水田への適用可能性を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
節水イネ栽培水田における温室効果ガスの放出量と水管理による削減量、間隙水中の重金属濃度も明らかにでき、節水イネ栽培の温室効果ガスや土壌からの重金属溶出の実態が徐々に明らかにされつつあるため。さらに、CO2等量とハザード指数を用いて環境影響を評価する手法を提案できたため。 さらに、CO2等量とハザード指数を用いることで、温室効果の異なるCH4およびN2Oや毒性の異なるAsおよびCdによる環境影響を一つの指標で評価できるようになったため。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き節水イネ栽培を続け、温室効果ガス放出量や土壌・収穫物中の重金属濃度を調査し、節水イネ栽培の環境影響を明らかする。同時に、N2O放出のメカニズムの調査および環境影響を削減できる手法も研究していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
担当者の予定が合わず上海市農業科学院での連続観測試験を実施できなかった。そのため、その試験に必要な消耗品等を用意できなかったため。次年度は現地観測に必要な機器・消耗品および旅費として使用する予定である。
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