研究課題/領域番号 |
18KK0318
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
三上 直之 北海道大学, 高等教育推進機構, 准教授 (00422014)
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研究期間 (年度) |
2019 – 2023
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キーワード | 気候市民会議 / 民主主義のイノベーション / 気候変動 / 脱炭素社会 / ミニ・パブリックス / 市民参加 / 気候民主主義 |
研究実績の概要 |
2020年度から延期してきたニューカッスル大学への渡航を2022年5月に開始し、同大学の客員研究員として、主な海外共同研究者であるStephen Elstub博士との共同研究を、次の通り行った。 (1)関連する基盤研究(20H04387)の一環として実施した「気候市民会議さっぽろ2020」について、Elstub博士が公式評価者を務めた英国議会主催の気候市民会議(CAUK)を比較対象として、参加市民の熟議の状況を中心に比較分析を進めた。 (2)2019年以来、英国各地の自治体やスコットランドで行われている気候市民会議の事例を収集し、主催者や企画運営者など関係者へのインタビュー調査と資料収集を行った。 (3)Democracy R&Dの年次大会(2022年9月、ベルリン)や、熟議デモクラシーに関する「秋の学校」(同年10月、ベルギー・・ユーペン)を始めとする国際会議に出席するなどして、民主主義のイノベーションや気候変動対策と市民参加に関係する研究者や実践家との交流を図った。英国や近隣諸国における民主主義や気候変動対策と、その歴史的背景について理解を深めるため、関連する博物館等の見学も行った。 (4)以上の成果を土台として研究をさらに発展させるため、海外共同研究者と議論して2023年度以降の研究の展開戦略を検討した。検討結果をもとに、「気候民主主義」をテーマとした新たな研究課題を基盤研究(A)として申請し、2023年2月に採択された。 英国への渡航に先立つ2022年5月中旬に、本研究の基課題である基盤研究(17H01927、2017-19年度)や、それを発展させて実施した基盤研究(20H04387、2020-22年度)とも連動して進めてきた一連の研究を中間的に総括し、日本語の単行本として出版した(三上直之『気候民主主義:次世代の政治の動かし方』岩波書店)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルス感染症の影響により2020年度から英国への渡航を延期してきたが、渡航先の状況変化を受けて2022年5月25日に渡航が実現し、海外共同研究者との共同研究を開始することができた。渡航先では、年度当初に計画した通り、海外共同研究者と共に、英国と日本の気候市民会議の実施事例の比較研究や、英国における市民会議に関する事例調査などを実施した。またこれに先立って、本研究の主題である「脱炭素社会への転換と民主主義の革新・深化との統合的実現」(=気候民主主義)に関する日本語書籍を出版し、これにより主に渡航前の2021年度まで成果を集成し、発表することもできた。以上の状況に基づいて、「おおむね順調に進展している」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
2023年5月23日までニューカッスル大学に滞在し、上記「研究実績の概要」で述べた(1)および(2)の実施内容を中心として、引き続き共同研究を進める。帰国後もオンラインを活用し、主な国際共同研究者であるElstub博士や、今回の渡航を通じてネットワークを形成した研究者や実践家らと連絡をとりつつ、当初の目的に沿って研究を推進する。2024年3月には本研究課題の総括として、Elstub博士を日本に招聘し、2023年度に別途開始する研究課題(基盤研究(A)「気候民主主義の日本における可能性と課題に関する研究」、23H00526)の研究分担者や協力者、日本国内で気候市民会議、気候変動対策への市民参加に取り組む市民や実践家、自治体関係者などの関係者も交えて、討論と交流の機会を設ける。
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