本研究課題は、国際経済紛争処理制度の改革をテーマとしており、最終年度である2023年度はWTO紛争処理の改革と投資仲裁の改革の双方について研究を行った。 WTO紛争処理については、WTOにおける改革議論の状況を分析したほか、国際法学会年次大会においてWTO紛争処理の現状と今後の見通しについて研究成果を発表した。またWTO紛争処理上級委員会に暫定的に代わるものとして立ち上げられたMPIA仲裁の位置づけについて論文を発表した。さらにWTO紛争処理改革の位置づけについて日経新聞に論説を発表した。このほかWTO紛争処理の機能を補うものとして利用が検討されることの多い一方的措置(いわゆる反威圧措置に対する措置を含む)の国際法上の位置づけについて、Society of International Economic Lawの年次大会において発表したほか、国際法協会日本支部の研究大会でも発表した。 投資仲裁については、主に気候変動関連紛争との関連で、現状を分析するとともに、どのような改革が可能かを研究した。特にECT(エネルギー憲章条約)については、ECTに関する投資仲裁の現状と、ECT近代化交渉の状況を分析した論文を学術雑誌に掲載した。また気候変動関連投資仲裁における主要な論点と日本のとるべき方針についてまとめた論文を発表した。また、気候変動のみならず、安全保障関連政策との関連で投資仲裁が国の規制権限をどのように考慮しているかについての英文のディスカッション・ペーパーを発表した。このほか投資仲裁における気候変動紛争を扱った英文書籍の英文書評を学術誌に発表した。 気候変動貿易投資紛争に関連しては、国際学会での発表も行い、その成果が2024年度中に書籍の一部として掲載される予定である。
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