研究課題/領域番号 |
18KK0458
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
阿部 学 新潟大学, 脳研究所, 准教授 (10334674)
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研究期間 (年度) |
2019 – 2021
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キーワード | 遺伝子改変ラット / ドーパミン / ゲノム編集 / コンディショナル遺伝子発現制御 |
研究実績の概要 |
コンディショナル遺伝子発現制御法(生体内における遺伝子発現時間、発現量、発現細胞種などに任意の制限を加える方法)は遺伝子機能の解析技術として極めて強力であるが、内在遺伝子に対しての点変異や低分子タグのノックインなど微細な変異への適用が困難であることや、変異動物作製のため長い実験期間を要することが問題であった。研究代表者は基課題において、Cre/loxP組換え系を用いた新規コンディショナル遺伝子発現制御法とゲノム編集技術と組み合わせることで、従来の点変異/低分子タグ等のノックイン法が内包する問題点を克服できる可能性を見出し、その検証のため、遺伝子改変マウスを用いた小脳発達の分子機構の解明を目的とした研究を遂行中である。 基課題の研究を発展させ、遺伝子改変ラットを用いた青班核ノルアドレナリンニューロンからのドーパミンシグナル伝達機構及び新奇体験による記憶保持の強化の分子機構の解明を目的とする国際共同研究をデンマークAarhus大学DANDRITE研究所の竹内倫徳博士と共に計画した。基課題にて開発されたコンディショナル低分子タグ発現カセットを用いたドーパミン受容体、ドーパミン生合成酵素等を標的としたノックインラットを作製して標的タンパクの発現、動態解析と行動試験を竹内研究室で行い、基課題の研究の発展性を実証しつつ本応募課題の目的を達成する。個別目標としては(1)青班核軸索と海馬神経細胞における神経伝達物質とその受容体の関係性の解析(2)青班核ニューロンからのドーパミン放出の分子機序の解析(3)記憶保持の強化過程における海馬ドーパミン受容体の機能解析を設定した。また、記憶保持の強化過程の解析に有用なcFos-tTAノックインラット系統の作製と解析も行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度はLister Hooded系統ラットES細胞からの通常の標的遺伝子組換え法およびゲノム編集法によるノックインラットの作製を国内にて研究協力者と共に行った。作製したラットについてはDANDRITE研究所へ導入し、Cre活性依存的なノックイン遺伝子の発現検証、低分子タグ付加タンパクの動態解析、薬剤によるドーパミンシグナル伝達の制御可能なノックインラットの行動試験を行い、個別目標の達成を目指す予定である。 研究協力者により立ち上げられ維持されているLister Hoodedラットコロニーおよび生殖細胞系列伝達可能なLister HoodedラットES細胞を用いることで、cFos-tTAノックインキメララットを作製し、現在は生殖系列伝達の確認中である。また、ゲノム編集技術のGONAD(Genome-editing via Oviductal Nucleic Acid Delivery)法を改良することで、cFos-tTAの動作検証のためのtetO-H2B tdTomatoノックインラットを樹立することができた。この改良された新規ノックイン技術により安定して3kb程度のDNA配列のノックインラット作製が可能となり、現在、論文発表するための準備を進めている。 代表者と海外共同研究者は定期的に研究方針と準備状況とについて打ち合わせており、計画通りに研究が進展しているという認識で一致しているが、代表者自身が渡航し海外共同研究者と研究を遂行するという本課題の主要な目的については、予期していなかった新型コロナウイルス感染症の世界的流行のために実現できていない。そのため進捗状況に関しては「やや遅れている」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
研究代表者は、海外共同研究者の研究室において(1)2つの異なるドーパミン依存的な新奇性回路による日常の記憶の亢進、(2)絶対的新奇性による日常の記憶の亢進に関与するタンパク質の同定、(3)ドーパミン依存的な新たな情報の知識への統合を明らかにするための研究に参画し、代表者が技術的見地より個別の導入遺伝子変異について合議し、分子生物学、生化学、解剖学的実験を含んだ研究を遂行する予定である。具体的には、作製されたラットを用い、組換え酵素Cre発現ウィルスベクターを標的脳部位である青班核や海馬へStreotaxicに導入することで、ノックイン遺伝子がCre活性依存的に発現することを組織学、生化学、分子生物学的手法により検証する。また、GONAD法を用いてラット胚に直接Creノックインを行うことで一世代コンディショナルノックインラット作製についても検討する。さらに、研究協力者が中心となり作製を進めているcFos-tTAノックインラット系統も樹立されつつあるため、先行してその系統の解析も行う予定である。 しかし新型コロナウイルス感染症流行のため、現時点では渡航については見合わせている状況であり、渡航可能となった場合に備え、国内で実施可能な研究を継続中である。すなわち、引き続きcFos-tTAノックインラット系統、低分子タグノックイン系統、コンディショナルノックインラット系統の作製を進め、樹立できた系統については可能な限りその動作確認を行い、海外共同研究者へ搬送する。 なお、発生工学的実験を支援する主たる国内研究協力者一名が予期せず離職することとなり、国内における本課題の研究遂行に支障が生じる可能性があるため、次年度には発生工学的実験の補助とラット飼育管理等のために実験補助員1名を雇用する予定である。
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