研究課題/領域番号 |
18KT0014
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
梶原 誠司 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 教授 (80252592)
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研究分担者 |
大竹 哲史 大分大学, 理工学部, 准教授 (20314528)
三宅 庸資 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 研究職員 (60793403)
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研究期間 (年度) |
2018-07-18 – 2021-03-31
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キーワード | フィールド高信頼化 / VLSIテスト / データマイニング / 組み込み自己テスト / 予防安全 |
研究実績の概要 |
本研究では、フィールド運用中のVLSIの自己テストで得られる、故障した際の使用環境や遅延マージン等の情報を解析することにより運用中のVLSIの状態を把握し、劣化の検知や故障解析、予防安全に活用していく手法の開発を目的とする。 (1)テスト履歴データの作成・取得方法の確立 (2)テスト履歴解析に基づく一時故障の弁別と劣化予測手法の開発 (3)アダプティブテスト履歴作成最適化手法の開発等の研究課題を解決することにより、劣化故障による誤動作を未然に効率良く防止できるようになり、現在は十分に実現できていないVLSIの予防安全を達成する。 本年度は、(1) テスト履歴データの作成・取得方法の確立を行うため、フィールド運用中のVLSIから自己テストデータを取得するためのテストアーキテクチャを考案し、実チップに実装した。回路内部にテストコントローラを配置して組込み自己テスト回路を制御することで、フィールドでの自己テストを実現する。これにより、システムのパワーオン/オフ時やシステムの空き時間などのテスト機会に、テスト履歴として保存するデータを測定する。 また、データマイニングによるテスト履歴活用の第一歩として、過去のテストにおける良品のチップと不良品のチップのデータのパターンを学習し、新たにテストするチップに対して良品であるか否か予測を行うための予測モデル作成手法を提案し、国際会議で発表した。予測精度向上のための予測対象のテスト項目を絞り込む事前学習手法を提案し、更に、実チップのテストデータを用いた評価により、提案手法の有効性について評価・検証を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最初の研究開発項目であるテスト履歴データの作成・取得方法について、フィールド運用中のVLSIから自己テストデータを取得するためのテストアーキテクチャを考案し、実チップに実装した。回路内部にテストコントローラを配置して組込み自己テスト回路を制御することで、フィールドでの自己テストを実現している。研究開発項目である二番目のテスト履歴活用方法の確立についても、テスト履歴から故障となるチップの予測モデル作成手法についての成果を発表するなど順調に研究が進めており、全体としておおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究方針として、これまでに開発した手法の改良を行うとともに、以下の項目について、研究に着手する。 (1)過渡故障と断続故障の弁別手法の開発:VLSIがフィールドで一時的に誤動作する原因に、過渡故障と断続故障がある。過渡故障は、例えばソフトエラーのような外部からのノイズ等による誤動作であり、VLSIのハード的な欠陥や性能低下とは無関係である。断続故障は、例えば遅延マージンの減少した箇所が温度上昇のような環境要因と合わさって起きる誤動作があるが、将来VLSIの欠陥に繋がるものである。過渡故障には再計算等で対応すればよく、修復や交換等の対処は不要である一方、断続故障は修復や交換等の対処を要するため、過渡故障と断続故障を弁別することは重要となる。回路の動作だけ見るとこれらの弁別は困難と思われるが、テスト履歴の解析と故障の再現性のテストに基づいて、それらを弁別する手法を開発する。 (2)テスト履歴解析に基づく劣化予測手法の開発:遅延マージンはテストパターンによって活性化される経路に依存するが、これまでに開発した要素技術では活性化経路を考慮しておらず、遅延マージンは楽観的な推定となっていた。そこで、活性化経路を考慮し、より厳密な遅延マージン推定により得られる「現在の劣化状況」のテスト履歴から「将来障害を引き起こす時期」を予測する。この実証評価には遅延マージンの減少を模擬できる試作チップを用いる。 (3)アダプティブテスト履歴作成最適化:テスト履歴の解析により、遅延マージンの減少速度が速い箇所のテストパターンの情報を得ることが出来る。それをフィールド運用中の自己テストにフィードバックし、危険の迫る劣化箇所を頻繁にテストしてテスト履歴を取得するための、アダプティブテスト選択機構を設計し、試作チップに組込み実証評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
二人で予定していた国際会議での調査が都合により一人になったこと,および,大分大学でのFPGAボード等の設備備品の購入予定が既に所有する機器の使用して前倒して実験した等により,未執行が生じた.2019年度に執行予定である.
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