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2021 年度 実施状況報告書

多魚種漁獲による不確実性に強い日本型ポートフォリオ漁業の理論化と政策探求研究

研究課題

研究課題/領域番号 18KT0038
研究機関岩手大学

研究代表者

石村 学志  岩手大学, 農学部, 准教授 (50524815)

研究分担者 J・R Bower  北海道大学, 水産科学研究院, 准教授 (10312406)
大元 鈴子  鳥取大学, 地域学部, 准教授 (70715036)
江幡 恵吾  鹿児島大学, 農水産獣医学域水産学系, 准教授 (10325772)
金岩 稔  三重大学, 生物資源学研究科, 准教授 (60424678)
岩田 繁英  東京海洋大学, 学術研究院, 助教 (80617316)
研究期間 (年度) 2018-07-18 – 2023-03-31
キーワード漁業ポートフォリオ / 多魚種漁獲漁業 / 経営安定 / ポートフォリオ効果 / リスクとリターン / レジリアンス
研究実績の概要

2021年度は本研究プロジェクト目的である(1)漁業ポートフォリオ解析により多魚種漁獲が資源・魚価変動に対して漁業の経営安定化・レジリアンス構築に寄与すること、またこうした結果から(2)日本独自の多魚種漁獲漁業のポートフォリオ漁業設立条件を確立をめざした。さらに、こうした結果をわかりやすく、漁業者や関係者に提示することでコロナ禍の行動制限により困難にあるデータ収集と解析へのさらなる協力を得ることで、本研究プロジェクトの推進をおこなった。
(1)漁業ポートフォリオ解析により多魚種漁獲が資源・魚価変動に対して漁業の経営安定化・レジリアンス構築に寄与
日本の伝統的な多魚種漁獲漁業である定置網漁業を太平洋・日本海と海洋環境の異なる事例で漁業ポートフォリオ分析を行った。こうした事例では定置網漁業の多魚種漁獲魚種組成が大きく数年単位で変化してゆくことが明らかとなった。こうした魚種変遷・交替がある多魚種漁獲漁業では、少数主要魚種漁獲のみのポートフォリオと全漁獲魚種で構成するポートフォリオでは後者のポートフォリオの方がリターン(漁獲高)に対するリスク(変動)が低く、多魚種への分散漁獲を行うことでリスクを軽減し、経営安定化を導くポートフォリオ効果が高いことが示された。
(2) 日本独自の多魚種漁獲漁業のポートフォリオ漁業設立条件
2019年からの水産政策改革では魚種・系群ごとの漁獲可能量拡大と漁獲割当の導入により特定魚種の漁獲及び水揚制限が行われてゆく。こうした条件をもとに、シミュレーションを行うことで、こうした特定魚種・系群漁獲制限により定置網漁業などの選択制の低い多魚種漁獲漁業の経営安定を阻害されることが示された。こうした理由から、多魚種漁獲漁業のポートフォリオ漁業設立条件は、魚種構成とその変化の把握の上での、特定魚種の漁獲及び水揚制限を行う必要があることが示された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

2021年度はコロナ禍継続の影響により、これまで研究の中心を担ってきた外国人研究員が研究半ばで帰国し、研究体制の立てなおしを余儀なくされた。しかしながら、解析手法の確立を進めたことで、大学院生を中心にした研究体制に移行することで、研究を進めてきた。
学会発表などにより研究の日本漁業に対する有効性を提示することで、より多くの漁業者・関係者の協力を得られる環境を最終年度に向けて作ることができた。

今後の研究の推進方策

2022年度はコロナ禍影響のために延長してきた、本研究プロジェクトは最終年度となる。これまでの個別漁業体・地域レベルでの漁業ポートフォリオ解析から、都道府県レベル・全国レベルでの解析に展開してゆくことで、日本型ポートフォリオ漁業を支える漁業制度、資源管理や漁業政策のあり方を提示してゆく。現在、個別漁業解析した論文が投稿中である。論文での成果発表をわかりやすく漁業者や関係者に提示してゆく必要がある。そのため、2021年度からあらたに始めたデータ可視化による漁業者・関係者との協働を促すための方法と手段開発を並行してゆく。最終年度は政策展開とともに、データ解析結果の提示により、あらたな協働を生み出しデータ提供と解析を行うことのできる、研究拡大のサイクルを作り出すことを目指す。

次年度使用額が生じた理由

本年度はコロナ禍の継続により外国人研究員の途中退職などや行動制限が加わったことで、繰越金が生じた。この残金については、行動制限緩される次年度に研究期間を延長し次年度の旅費及び人件費に組み込むことで、研究プロジェクトの完成を目指す。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (8件)

  • [雑誌論文] Evaluating the impact of COVID-19 on ex-vessel prices using time-series analysis2022

    • 著者名/発表者名
      Abe Keita、Ishimura Gakushi、Baba Shinya、Yasui Shota、Nakamura Kosuke
    • 雑誌名

      Fisheries Science

      巻: 88 ページ: 191~202

    • DOI

      10.1007/s12562-021-01574-x

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 金融工学が照らす日本における定置網漁業の価値と重要性2022

    • 著者名/発表者名
      中村洸介・阿部景太・金澤海斗・相良季央・石村学志
    • 雑誌名

      ていち

      巻: 141 ページ: 65~76

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] WTO must ban harmful fisheries subsidies2021

    • 著者名/発表者名
      Sumaila U. Rashid、Skerritt Daniel J.、Schuhbauer Ann et al.
    • 雑誌名

      Science

      巻: 374 ページ: 544~544

    • DOI

      10.1126/science.abm1680

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] 多魚種漁獲による大型定置網漁業の経営安定可能性探求2022

    • 著者名/発表者名
      中村洸介, 阿部景太, 金澤海斗, 相良季央, 石村学志
    • 学会等名
      日本水産学会
  • [学会発表] 岩手県宮古市沖合底曳網漁におけるポートフォリオ漁業理論に基づいた漁業経営安定戦略の探求2022

    • 著者名/発表者名
      金澤海斗, 石村学志, 阿部景太, 中村洸介, 相良季央
    • 学会等名
      日本水産学会
  • [学会発表] 漁業者との漁獲魚種・漁獲量分布変遷の共通認識を深める基盤創生に向けて-コミュニケーションツールとしての可視化の課題-2022

    • 著者名/発表者名
      下山奈津美,相良季央,三橋瑳絵, 金澤海斗,石村学志,阿部景太,中村洸介,関口愛理
    • 学会等名
      日本水産学会
  • [学会発表] 漁業可視化に向けた巨視的データとミクロ経済データ統合の可能性と課題2022

    • 著者名/発表者名
      小川柚葉, 金澤海斗, 三橋瑳絵, 石村学志, 阿部景太, 渡邊一仁, 馬場真哉
    • 学会等名
      日本水産学会
  • [学会発表] 定置網の漁業経営安定性と水産政策改革の影響ー石川県漁業協同組合加賀支所を例に2021

    • 著者名/発表者名
      中村洸介, 石村学志, 阿部景太, 金澤海斗, 相良季央
    • 学会等名
      水産海洋学会
  • [学会発表] ベイズ推論を用いた三陸水産資源の資源推定に関する研究 岩手県で漁獲されるヒラメを対象として2021

    • 著者名/発表者名
      木皿祐雅, 川村慧, 石村学志, 馬場真哉,下山奈津美
    • 学会等名
      水産海洋学会
  • [学会発表] ベイズモデルを用いた岩手県レベルでの資源推定に関する研究2021

    • 著者名/発表者名
      木皿 祐雅, 川村 慧, 石村 学志
    • 学会等名
      日本水産学会
  • [学会発表] 多魚種漁獲漁業の安定経営に向けた要素探求:岩手県宮古市底曳網漁におけるポートフォリオ漁業理論に基づいた漁業経営安定戦略の探求2021

    • 著者名/発表者名
      金澤海斗, 石村学志, 中村洸介, 阿部景太, 相良季央
    • 学会等名
      水産海洋学会

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公開日: 2022-12-28  

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