研究課題
(1) 栽培技術の高度化に向けては,インドネシアの泥炭土壌に生育するサゴヤシでも多量要素のカリ,微量要素ではホウ素には欠乏が生じていないが,他の成分には欠乏が生じていることが窺われた。(2) これまで施肥の効果が主茎の成長に現れ難いとの報告があったが,ヤシ科で欠乏がしばしば生じる銅は,葉面散布処理が効果的と考えられる結果を得た。(3) マレーシアの鉱質土壌 (MS),薄い泥炭土壌 (SPS) で生育するサゴヤシの根より抽出したDNAを用い,小サブユニットrRNA遺伝子断片を増幅した配列によるアーバスキュラー菌根菌 (AMF)解析を行ったところ,MSにおいてSPSより多様性が認められた。また,SPSからは酸性・多湿に適応するGlomusやAcaulosporaの種が得られ,泥炭湿地でのAMFによるリン等の養分供給への貢献が窺われた。(4) マレーシアのMSとSPSにおいてサゴヤシ根に内生する細菌群集・窒素固定菌をメタゲノム解析により調査したところ,16S rRNA遺伝子配列からMSでは11門,SPSでは4門の主要系統が検出され,いずれもProteobacteria が最も多く存在した。綱レベルではMSから17綱,SPSで6綱が,科レベルではMSから24科,SPSから7科検出され,MSではSPSに比べて多様な細菌が得られた。SPSでは窒素固定菌であるBurkholderiaを含むBurkholderiaceaeが優占することが明らかとなった。(5) 異なる土壌水分条件に対する生育反応の調査から,地下水位を30cm以下に抑えることで,光合成速度や物質生産の低下を防止できるものと考えられた。(6) 用途拡大に向け,パスタの材料としてサゴ澱粉の他,米粉,雑穀類,いも類,野菜パウダー等を比較した結果,サゴ澱粉にコーンフラワーを添加することで外観・食感ともにパスタに近いものが得られた。
2: おおむね順調に進展している
研究計画の主要小課題は順調に進展しているが,2019年度第4四半期以降,新型感染症の影響拡大により研究代表者および分担者の現地への出張が叶わず,サゴヤシの商品作物化に向けた生産地域での活動が推進できていないために3ヵ年の計画の後半部分における現地展開の実施に困難な状況が生じた。日本人研究者が渡航できないことの他にも,生産国の主要な研究協力者の一人がホテルにおける療養を余儀なくされたこと,また,別の協力者の配偶者が逝去したということなどが影響した。
依然として研究者が日本からサゴヤシ生育地に出向いての調査開発に困難は続いているが,現地国でのワクチン摂取が進んでおり,現地研究協力者のフォールドワーク再開に向けた社会情勢は好転しつつある。また,日本における緊急事態宣言が解除されていた期間,サゴヤシ生育地における規制が緩和された期間に代表者の研究室に所属する大学院博士後期課程の学生が渡航し,現地滞在していることから,当該地域の社会情勢を考慮しながら,現地協力者との連携を密にし,オンラインでの協議を重ねるなどの工夫により,当初の計画達成に向けて日本と現地国の協働体制を強化する。
新型感染症の影響で一部の海外等での活動が行えなかったことから繰り越しとした。
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巻: 24 ページ: 65~72
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10.1080/1343943X.2019.1698968