研究課題/領域番号 |
18KT0086
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研究機関 | 帯広畜産大学 |
研究代表者 |
相内 大吾 帯広畜産大学, 畜産学部, 助教 (50552783)
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研究期間 (年度) |
2018-07-18 – 2021-03-31
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キーワード | カルシウム / バレイショ / アブラムシ / 植物ウイルス / 行動制御 |
研究実績の概要 |
近年、カルシウム施肥の効果として、害虫の発生量を抑制することが明らかとなっているが、その抑制メカニズムや病原体の伝播抑制への寄与に関しては不明である。本研究課題では、ベクターの行動を制御することで病原体の伝播を抑制するというコンセプトを、カルシウム施肥による植物体の頑健化という生物現象に外挿する。昆虫行動学的なアプローチにより、ベクター行動制御におけるカルシウムの役割について理解を深め、予防医療的な手法・概念によりウイルス病から植物を保護する技術の創発へつなげることを目的とする。 昨年度は、カルシウム濃度の異なる培地上で生育させた組織培養バレイショを用いて、ジャガイモYウイルス(PVY)の植物体内移行とカルシウムの関係を調査した。培地中のカルシウム含量を1000μM(低カルシウム)と10000μM(高カルシウム )に調整した供試植物にPVYを感染させ、それぞれ1日、10日、20日が経過した植物からTotal-RNAを抽出し、RT-PCRを用いてPVYを検出した。 PVY感受性品種(男爵)にPVYを感染させた試験では、カルシウムの含量とPVY体内移行の間に関連性はみられなかった。また、PVY抵抗性品種(西海35号)に同様の処理に加えて生育温度を生育適温(20℃)と、PVY抵抗性が失われる高温環境(28℃)でそれぞれ生育させ、同様の方法でPVY-RNAの検出を行った。生育適温環境下では、カルシウム含量に関わらずPVYの長距離移行は確認されなかったが、高温環境下では低カルシウム含量の植物体でのみPVYの長距離移行が確認された。これらの結果から、カルシウムはPVYの植物体内移行に直接影響を及ぼさないが、抵抗性品種が高温ストレスを受けた際のPVY抵抗性に対して抵抗性を補強する作用がある可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は、カルシウム濃度の異なる培地上で生育させた組織培養バレイショを用いて、ジャガイモYウイルス(PVY)の植物体内移行とカルシウムの関係を調査した。培地中のカルシウム含量を1000μM(低カルシウム)と10000μM(高カルシウム )に調整した供試植物にPVYを感染させ、それぞれ1日、10日、20日が経過した植物からTotal-RNAを抽出し、RT-PCRを用いてPVYを検出した。 PVY感受性品種(男爵)にPVYを感染させた試験では、カルシウムの含量とPVY体内移行の間に関連性はみられなかった。また、PVY抵抗性品種(西海35号)に同様の処理に加えて生育温度を生育適温(20℃)と、PVY抵抗性が失われる高温環境(28℃)でそれぞれ生育させ、同様の方法でPVY-RNAの検出を行った。生育適温環境下では、カルシウム含量に関わらずPVYの長距離移行は確認されなかったが、高温環境下では低カルシウム含量の植物体でのみPVYの長距離移行が確認された。これらの結果から、カルシウムはPVYの植物体内移行に直接影響を及ぼさないが、抵抗性品種が高温ストレスを受けた際のPVY抵抗性に対して抵抗性を補強する作用がある可能性が示された。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに、高カルシウム植物体において、アブラムシの行動が制御されること、増殖が抑制されること、植物ウイルスの移行が条件によって制限されることが明らかになった。今年度は、これらの要因とアブラムシによる植物ウイルス獲得効率、伝搬効率との関係を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響により予算執行に影響を受け、残額332円が生じたため繰越した。
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