研究概要 |
SV40メジャーカプシドタンパク質であるVP1五量体の自己組織化によるナノカプセル形成を誘導するいくつかの因子を同定し、カプセル表面の改変・修飾やカプセル中への物質内包に関する基盤技術を開発した。(1) マイナーカプシドタンパク質VP2/VP3が、VP1五量体によるナノカプセル形成の誘導能を持つことを見出し、誘導に必要な最小領域を決定した。その領域と蛍光タンパク質やシトシンデアミナーゼなどの酵素との融合タンパク質を作製し、それらを用いてナノカプセル形成と、その中へ融合タンパク質を内包する技術を開発した。融合タンパク質を内包したナノカプセルはSV40と同様に宿主細胞への感染能を有し、融合タンパク質をその活性を保持した状態で感染細胞内に導入できることを示した。蛍光タンパク質を導入した細胞では、細胞内での蛍光が確かに観察され、また、熱耐性のシトシンデアミナーゼ酵素の導入細胞では、培養液中にプロドラッグである5-FUを添加すると、導入された酵素の活性によって5-FCが合成され、細胞が死に至ることを示した(J.Biotechnol.,134,181-192,2008)。 (2) 2本鎖DNAもナノカプセル誘導能を持つことを見出した。しかも、DNAはナノカプセル中に内包され、感染によって細胞核内に導入され、低頻度ではあるが遺伝子発現が起こること見出した(Genes Cells,12,1267-1279,2007)。その際、ナノカプセルの中に完全に内包できるDNA長は約2,000塩基対であったが、近年、その制約を解除でき、約5,000塩基対長のDNAを内包する技術を開発した。(3) 8nm〜30nmの粒径を持つマグネタイトの一個をナノカプセルの中に内包する技術を開発し、現在、そのMRI造影剤としての評価を実験マウスを用いて行っている。 (4) ナノカプセル表面を遺伝子工学的手法や化学的手法によって改変・修飾し、細胞指向性や抗原性を改変する技術を開発した(J.Biotechnol.,135,385-392,2008)。これまで開発した技術を組み合わせることにより、目的物質を内包し、標的細胞指向性を有する高機能性ナノカプセルの構築システムが確立された。
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