研究概要 |
本研究は、不安定核ビーム(RIビーム)の中間エネルギー直接反応を用いて、3および4中性子系、超重水素同位体6,7Hおよび中性子ドリップラインを超えた軽い原子核を生成し、そこに発現する中性子相関を調べることにより、中性子多体系のダイナミックスを解明することを目的とする。具体的には、核子あたり100-200MeVの二重荷電交換反応およびαノックアウト反応の測定を行う。加速器を用いた実験は平成21年度以降に行う予定が、本年度は、そのための準備として以下の研究を行った。 (1)高分解能磁気分析器SHARAQ焦点面検出器(CRDC)の製作 本研究で測定する中間エネルギーの□粒子を含む軽い重イオンの焦点面における飛跡を高分解能で測定するために物質量の少ない低ガス圧で動作するCRDC(Cathod Readout Drift Chamber)を昨年度確定させた詳細仕様に基づき製作した。有感領域55cm×30cmの検出器2台で構成され、分割カソード(1024チャネル)に誘起される電荷分布の重心を求める。α線源および核子あたり200MeVの窒素ビームを用いて、半値幅300□m以下の分解能が得られることを実証した。 (2)多チャンネル検出器のための高速データ収集システムの開発 CRDCの多数の信号処理として、フランスで開発された前置増幅器にマルチプレクサを組み込んだASICを用いることとし、これを製作した。また、Multi-Hit TDCおよびFlash ADCといったデッドタイムのほとんどないアナログデジタル変換器を高速で読み出すための第一段階のシステムを製作しSHARAQスペクトロメータのコミッショニング実験に用いた。 (3)SHARAQスペクトロメータによる8Be測定シミュレーション 8Beから崩壊する2つのα粒子をSHARAQスペクトロメータで測定するためのシミュレーションに必要な、電磁石の精密な磁場測定を行った。高次の収差をふくむイオン光学上のパラメータがほぼ決まり、2粒子測定効率の見積もりのための基礎データが得られた。 (4)ノックアウト反応モデルの検討 中間エネルギー領域では、インパルス近似がよい精度で適用可能であることがわかり、それに基づくモデルの検討を始めた。□粒子ノックアウトに関しては、分光学的因子を殻模型とクラスター模型で見積もる方向で理論研究者との研究交流を図った。
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