言語優位半球のBroca野近傍の腫瘍摘出、およびその対照群として非言語有意半球の前頭葉の腫瘍摘出を行った患者、約50名に被験者として協力を得て、非言語的課題の遂行成績に関わる前頭葉部位の特定を行った。非言語的な刺激を用い、キー押し応答を求める2種類の課題を、Cueにしたがってターゲットの反応すべき次元の切り替えを行う課題(非言語的タスク切り替え課題)を実施した。また。約50名の腫瘍摘出部位をデータを標準脳テンプレートに変換し、健常者と比較できるようにした。その結果、左半球損傷者と右半球損傷者で異なる結果を示した。まず、左半球損傷者では、ターゲット次元の切り替えにともなう切り替えコストが大きく、特に、Broca野近傍の腫瘍摘出患者でその傾向が大きかった。ゆえに、言語野が課題の構えの設定に重要な役割を担っていることが示唆された。また、右半球損傷患者では、画面に提示された妨害刺激に対して、より大きな干渉効果を示した。この結果は、右前頭葉が内的表象と外的な環境との競合状態の解消に関与しているという従来の説とも一致する。これらの部位は、おおむね従来の脳機能イメージングの結果とも一致するが、本研究の結果から、各部位の機能がより詳細に明らかになった。
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