本年度は、非言語的な刺激を用い、Cueにしたがって切り替えを行う課題(非言語的タスク切り替え課題)を、左前頭葉、右前頭葉の外科的手術を受けた患者30名に実施し、課題切り替えに関わる下位機能(ターゲットテンプレートの記憶、反応の切り替え、刺激と反応のマッピングの記憶など)の低下に特異的な脳部位を、損傷部位マッピングの手法を用いて解析し、抽出した。その結果、左右の中前頭回がタスクの切り替えに特異的であり、また、右の頭頂葉が課題セットの維持に重要であることが明らかになった。さらに、右前頭葉極部が、課題非関連な妨害刺激からの干渉を低減させる、フィルター機能を有している可能性が示された。また、手術中に、覚醒下電気刺激法によってBroca野が特定できた患者について、Broca野と、損傷部位マッピングで明らかになった中前頭回の位置関係に関する詳細な検討を行ったところ、タスク切り替えに関わる左中前頭回部位は、Broca野よりもわずかに前方かつ上方にある可能性が示された。これらの結果から、従来の脳機能計測手法では明らかになっていなかった非言語的な刺激を用いたタスク切り替えにおける脳内のネットワークが明らかとなった。特に、これら課題の遂行においては、左前頭葉のBroca野近傍の機能が重要であることが示された。
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