江戸時代の寛文・延宝期の京都に、大型の絵入りの冊子本や絵巻を制作する絵双紙屋が「源小泉」をはじめとして複数存在し、『竹取物語』・『住吉物語』などの平安時代の古物語を素材とした物語絵巻・絵入りの冊子、仮名草子作家による新作の絵物語も制作していた。ここにおいて平安時代の文学の享受がはたされ、絵と詞書が融合する中でさまざまな本文も生まれた。具体的には、國學院大學所蔵『竹取物語絵巻』は、寛文・延宝期の絵草双紙屋の制作になるものであり、その詞書書写者は、チェスター・ビーティー・ライブラリィ(CBL)所蔵『舞の本絵巻』と同一であり、また、國學院大學所蔵『住吉物語』(三冊本)の本文はチェスター・ビーティー・ライブラリィ(CBL)所蔵奈良絵本『住吉物語』本と同一であり、本文系統では尾州家本に属するものであることが判明した。さらに、國學院大學所蔵『住吉物語』(一冊本・二冊本・絵巻)の絵の構図は『住吉物語』の主題である継子譚を基調とし、國學院大學所蔵『竹取物語絵巻』の本文は正保刊本をもととし、絵の構図の多くも絵入り刊本をもととしている。
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