1、2008年度の特筆すべき成果は、英国オックスフォード大学ピットリバース博物館チェンバレンコレクションの調査であった。これは19世紀後半にお雇い外国人として日本に在住したB・H・チェンバレンの収集品で、就中日本の「おふだ」がその多くを占める。これまでこのコレクションを調査した日本の研究者は何人かいるが、ある目的に限った数日の閲覧にとどまり、収集した情報も断片的だった。そこで我々は現地に約1週間滞在し、300点余の資料を網羅的に調査した。その結果判明したことは、(1)資料の点数が知られていたよりずっと多く、(2)資料は全国の寺社に及び、特に神社関係のものが多い、(3)小泉八雲収集品が多いが、その他の資料も含まれる、などだった。この結果、このコレクションが19世紀後半の神社史を考える上で重要であり、19世紀末の資料として、1930年代の資料(グーランコレクション)、1970年代の資料(フランクコレクション)と合わせて時系列で検討するのに最良の資料であること等を確認した。2、調査団のオックスフォード滞在中、古山は同大学サックラーライブラリー等において古代ギリシア・ローマの神託・呪いに関する文献を収集した。3、チェンバレンコレクションの資料に見える寺社のうち、最北の金華山黄金山神社の調査を行った。その結果大半は20世紀めものだが、19世紀の火災以前の版木も残っていることが判明し、新資料を収集した。 4、各地で起請文・牛玉宝印の実地調査を実施した。中でも福井県・劔神社文書の調査では、1393年の文書の料紙とされる牛玉宝印が、文書と別の料紙であることを初めて確認し、実地調査の意義を再認識させられた。5、フランクコレクションの画像と調書のデータベースのアップロードが400点ほどになった。近い将来データベースを一般に公開すべく、資料所蔵者との間で調整を行っている。
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