研究課題
当該年度は、本研究の初年度にあたるので、ます問題設定と問題意識をメンバー全員の間で共有することに焦点を置いた。具体的には、各自がそれぞれの担当領域を念頭に置きつつ、すでに研究代表者が全員に提示済みの問題設定の概要を理解し、それをいかなる修正を加えたうえで、各自の領域に適用可能かを考察した。12月には、研究代表者の勤務先に集合して、問題設定について深い討論を行い、それまでの各自の考察結果を提示するとともに、できるだけ共通の理解に達するよう腐心した。とくに問題となったのは、日本とロシアの事例である。研究代表者が構想した問題設定は、西ヨーロッパの状況を前提にしているため、これら二カ国については、歴史的前提の点で齟齬する点が目立ったからである。工業化・産業化という社会的現実がすでに存在している西ヨーロッパと、農村社会の様相が濃い日本とロシアでは、宗教の存在形態がすでに大きく異なる。同時に、同じく西ヨーロッパといっても、宗派的状況はドイツ、イギリス、フランスでは異なり、この点でも今後、どのような視角で一括していくかが大きな課題として確認された。国教会の優越するイギリスの状況、カトリックの支配的なフランスの状況に比べて、ドイツは宗派的分立状態が見られるからである。また、アメリカも特殊事例として、これをどう理論的にカバーするかが大きな問題である。工業化を経験した国のなかでは、アメリカは宗教色の強い社会として独自性が際だっているからである。とくに、移民社会としての性格をどのように宗教社会学的次元に組み込むかが今後の課題として確認された。
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