研究課題
各分担者はこれまで、それぞれの担当範囲となる時代と国・地域に関して、共通のテーマ設定に即した課題を対象に据えて、実証的な解明作業に携わっている。研究方法としては、テーマを例証するような具体的なケース・スタディを取りあげ、その実態解明を進めるなかで、全体的なテーマとの関連(例証、修正、補足など)を追求するという方法をとっている。たとえば、アメリカの例で言えば、19世紀末の「社会福音主義者」と「原理主義者」を取りあげて、それがナショナリズム、世界大戦、アメリカ社会での工業化、移民の到来などと関連づけることに努めている。さらに、フランスの事例では、初期社会主義運動に見られる宗教的要素に注目して、それが運動の中でどのような一を占めたかを解明しつつ、宗教的情熱がもった社会改革的な実践的意義に照明をあてようとしている。また、19世紀ロシアについては、ロシア正教会がロシア社会の近代化、あるいはロシアをとりまく国際情勢に対応した姿勢をとったことが指摘されており、国内情勢に宗教的要素が大きく反映していることについて、解明が進められている。また、ナショナリズムがいかにして、またどの程度宗教的エネルギーを基盤としていたかについて、興味深い知見が得られている。ドイツについては、カトリック教会における再活性化に注意を払う一方で、他方で種々の生活領域における改良運動に焦点をあてるという研究戦略をとっている。これによって、既成宗教という枠にとらわれずに、宗教的エネルギーをその種々の表出形態において把握する試みが続けられているわけである。
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