研究課題
竹中は、本年度が本研究の最終年度にあたるため、研究の総括に重点を置いて研究を進め、とくに宗教社会学との接点を中心に分析を進めた。とくに考察の中核としたのは、千年王国論に見られるような新宗教運動の把握である。これによって、各研究分担者が行う研究を総括する理論枠組となるものである。これは、本研究に一箇のプロジェクトとしての統合性を与えるうえで、きわめて重要である。各研究分担者は、所定の分担にしたがい、それぞれの分野で研究を進めた。川本は、近代イギリスにおける歴史祝祭行事について考察を深め、宗教的因子が民衆の「記憶」に大きな意味をもつことを説いた。長井は、19世紀フランスにおけるユートピア的・宗教的色彩をもった労働運動を例に、社会主義と宗教がイデオロギー的接点をもつことを明らかにした。中野は、アメリカ史の全体をカバーする視点から、アメリカの政治文化における宗教的要素がいかに大きな役割を果たしたかを明らかにした。山口は、明治日本において、個別宗教の教義ではなく、宗教心、宗教的姿勢というメタ次元で、宗教が強い影響をもったことを説いた。伊藤は、近代ロシアにおける正教の位置づけを全般的観点から整理し、その意義を明らかにした。とくに、それがスラブ主義と結びつきながら、社会改革への展望をもったことを強調している。以上のように、代表者の提示する共通の理論枠組の中で、各研究分担者の個別研究が相互関連をもちながら配置され、一箇の研究プロジェクトとして完結性を得ることに成功した。
すべて 2010
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件) 図書 (3件)
Itinerario
巻: 34-1 ページ: 97-118
思想
巻: 1032号 ページ: 143-159
歴史科学
巻: 200号 ページ: 52-70