今年度は湮滅古墳のリストアップ(約500基)とそのデータベース化、またリストアップした湮滅古墳のうち東北地方、中部地方、九州地方と関東地方の一部について空中写真を購入し、空中写真データベースの作成をおこなった。空中写真データベースはこれまでに入手していたものもあわせ約1000枚を古墳、古墳群(約200カ所)ごとに整理し、検索できるようにした。また、あわせて空中写真の実体視をおこなって撮影状況の把握に努め、観察の可否の判別を空中写真データベースに記載した。なお撮影状況が良好で墳丘形態の復元に耐えられる資料は現状で3割程度であったが、大阪府花岡山古墳や百舌鳥大塚古墳など、これまで築造時期の位置づけが困難であった古墳で墳丘形態の復元が可能であることが明らかになるなど、一定の成果を得ている。 また、現在する美作地方の20m級の小円墳(殿田1号墳)と畿内地方の200m級前方後円墳(メスリ山古墳の一部)の測量調査を実施し、これらの規模の古墳が空中写真の観察によってどの程度復元し得るのか、比較検討をおこなった。 このほか実地踏査を空中写真による復元研究がおこなわれている富山県氷見市朝日長山古墳と、長持形石棺の出土が知られている山形県鶴岡市菱津古墳とでおこない、その正確な位置や旧状について聞き取り調査をおこなった。これらの古墳も空中写真を入手し、実体視して墳丘の復元に努めた。 このように19年度の研究は湮滅古墳、空中写真のデータベース化を優先的にすすめ、一部資料の分析に取り掛かかり、その資料の妥当性の検証に努めるなど基礎的作業を中心にすすめた。撮影状況によって観察可能なものは現時点で3割程度であったが、墳丘形態の復元が可能なものは確実に含まれており、本研究の最終的な目標でもある首長墓系列の再検討に一定の手応えがあった。
|