研究概要 |
本研究の主テーマは、超準的手法の論理的基礎付けである.これまで集合論をベースに行われていた超準解析の方法を,2階算術の弱い体系,とくにWKLoと呼ばれる公理系において展開する研究代表者の方法を改良する.本年度においては,研究協力者で代表者の(元)学生横山啓太と堀畑佳宏が,超準解析の議論をACAoに発展させ,とくに複素解析学の分野で多くの応用と興味深い知見を引き出した. 超準的手法を弱い形式体系と結び付けるもう一つの主要な目的は,計算可能性理論への応用,とくにアルゴリズム的ランダム性の構造分析への応用である.ある種の超準有限的なランダム列の標準部分を切り出すことで無限ランダム列が得られるというのが基本的アイデアである.本年度においては,コルモゴロフの意味での有限ランダム列が無限に延長できることを示した. さらに,研究代表者は,現代集合論の重要概念である無限ゲームの決定性に対して,2階算術の上で必要な集合存在公理を特定する研究を行った.関連して,グラフ上の有限ゲームに対する混合戦略の分析を行い,そしてその無限ゲームへの拡張を検討中である. 2010年9月には,海外協力者の劉晨光が統括する西安理工大学の研究センター「決定分析とアルゴリズム設計」を,堀畑佳宏が訪問して講義をし研究交流を深めた.2010年10月より学振の海外特別研究員としてSam Sanders(ベルギー・ヘント大学)が田中研究室に加わり,また2011年2月には算術の超準モデルの研究者・黄天楽(Singapore)を招聘して,東北大学および秋保において,北陸先端大学院大学の石原教授と協同で40名程度の研究集会を開催した.
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