研究課題/領域番号 |
19340038
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
盛田 健彦 広島大学, 大学院・理学研究科, 教授 (00192782)
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研究分担者 |
吉野 正史 広島大学, 大学院・理学研究科, 教授 (00145658)
松本 眞 広島大学, 大学院・理学研究科, 教授 (70231602)
岩田 耕一郎 広島大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (20241292)
川下 美潮 広島大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (80214633)
滝本 和広 広島大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (00363044)
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キーワード | 区間入換え変換 / 連分数変換 / Rauzy induction / 素数定理 / タイヒミュラー空間 / エルゴード理論 / 力学系ゼータ関数 |
研究概要 |
本年度は曲線のモジュライ空間で構成可能な拡散過程の中で、どのようなものがモジュライ空間のブラウン運動にあたるものなのかを特定するための準備として、タイヒミュラー測地流のエルゴード理論的挙動に注目した研究を行った。中でも、前年度に行った繰り込まれたRauzy-Veech-Zorich誘導変換(以下R-RVZ誘導変換という)の周期軌道分布に関する長さスペクトルの分布の非格子性の証明の改良の作業にかなりの時間をかけた。R-RVZ誘導変換の合成を記述する正行列の適当な組み合わせに古典的なPerron-Frobeniusの定理を適宜使用することによって、格子分布性を仮定すると矛盾が生ずるという初等的な証明が完成した。この結果はContemp.Math.に掲載が決定している論文Renormalized Rauzy-Veech-Zorich inductionsの中で発表予定である。その形式的な応用としては素数定理の類似をさらに一般化したChebotarev型の定理を証明することができるが、連分数変換の周期軌道とモジュラー曲面の閉測地線、およびモジュラー群の原始双曲元の共役類の場合と同様な自然な対応が存在するわけではないため、その本質的な意味を見極める段階には至っていない。これを含め現在までに得られているこの方面の成果については、2008年7月に京都大学数理解析研究所で開催された研究集会「L関数の値分布と関係する数論的な諸簡数の研究」において報告した。また、幾つかの考察からタイヒミュラー計量に関する測地的ランダムウォークの連続極限で得られる連続過程で、VeechやMasurが構成したタイヒミュラー空間上の測度を平衡測度とするものにタイヒミュラー拡散としての意味を持たせようというアイデアに到達した。
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