研究概要 |
本年度は,本研究の大幅な進展があった。予定していた3つの候補の吸着系のうち、1つの系で電子線照射効果を見出した。この吸着系は,Sn原子がSi(111)理想終端表面構造のT4siteと呼ばれる対称性の高い位置に吸着して、(√3x√3)R30゜配列(以下,簡単のため√3構造と略記する)を室温でしていることがわかっている。室温から約150Kに冷却すると√3構造は,3x3構造へ可逆的に変化することもわかっている。ところが、さらに冷却し約30Kで3x3構造が√3構造に戻ることが報告され新たな構造相転移ではないかという論文が発表されている(2006年)。 この30Kでの構造変化は,我々が先に見出していた(2005年)、si(001)表面における電子線照射による構造変化ではないかと予想し,低速電子回折(LEED)により調べたところ、電子線照射効果と結論してよい結果を得た。すなわち、約35Kから低い温度で,√3構造にはないが3x3構造には存在する(01/3)スポットの強度は明白な減少を示すのに対して,√3構造および3x3構造にともに存在する(4/3 1/3)のスポットは緩やかな増加を示した。さらに、サンプルを14Kまで冷却しておき,入射電子線のシャッターをあけることにより,(01/3)スポットの強度は時間とともに急速な減少を示したのに対して,(4/3 1/3)のスポットの強度はほとんど変化しなかった。入射電子線の電流、エネルギー依存性や、温度依存性なども調べたので,これらの詳細な研究結果を論文にまとめている。
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