平成19年度に、放射線検出時刻データ収集システムにロッシ・アルファ測定による即発中性子減衰定数の連続測定アルゴリズムを組み込んだ。そして、京都大学原子炉実験所の熱中性子炉体系の測定を通して、この試作装置の有効性を確かめた。平成20年度は、この測定手法の高速中性子体系への適用を検討した。高速中性子体系の測定で問題となる中性子-ガンマ線の弁別について、従来の中性子-ガンマ線弁別回路よりも簡便な回路構成で、かつ微妙な信号タイミング調整を必要としない最新の測定機器を整備した。ついで、2次元マルチパラメータMCAに、MCA開発メーカーと協力してロッシ・アルファ法の実時間測定アルゴリズムを実装し、高速中性子体系の測定に適用可能な放射線検出時刻データ収集システムを整備した。しかし、当初予定した京都大学原子炉実験所・臨界集合体装置KUCAを用いた測定は、FFAG加速器の整備が遅れたために実施しなかった。 熱出力800MWの加速器駆動未臨界炉を想定して、未臨界度監視装置に要求される即発中性子減衰定数のデータ処理手法について計算機シミュレーションで検討した。その結果、800MWの出力炉では中性子計数値に占める相関成分の割合が極端に小さく、相関項と非相関項を区別することなく同時に直接フィッティングして即発中性子減衰定数を求める手法には適用限界があることが明らかとなった。予め非相関項を推定して除去する等の新たな時系列データ処理法の工夫が必要である。
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