研究概要 |
本研究では、我が国における米からのバイオエタノール生産・普及の可能性の検討と世界の主要なバイオエタノール政策の調査を主要な研究課題とする。 最終年度として本研究の成果を、矢部光保・両角和夫編著『コメのバイオ燃料化と地域振興-エネルギー・食料・環境問題への挑戦-』筑波書房として出版した。 本年度の研究成果は、これまでの成果を統合し、コメによるバイオエタノール生産の事業収益性を示した。すなわち、九州大学の収量試験から多収量品種「ミズホチカラ」(西海203号)の精玄米量は約1000キログラムと計算され、製造業者がコメを1キロ25円で買取ると原材料費は73.0円/lになる。この場合、年間3万klのプラントで20年間生産すると、ランニングコストを含む生産原価は100円/lとなる。この価格は、バイオマス・ニッポンで2015年に向けた国産バイオエタノール生産の原価目標であるが、これではエタノール製造業者は利益を生まない。しかし、副産物として家畜飼料を1キロ20円で販売すると、20年間で51億円の利益を生み、事業の採算性は確保される。 また、農家は、コメ1キロを25円で販売しても、2010年度導入のバイオ燃料米等助成金80,000円/10aが利用できれば、農家の収益性も確保でき、コメによる国産バイオエタノールの可能である。なお、この80,000円/10aは本研究で推計したバイオエタノール用米導入に必要な農家助成金額と同額である。 さらに、機能食品等副産物の多段階利用は、事業の収益性の改善とともに、投入エネルギーが他の製品にも案分されるため、バイオエタノールに係わるコメ生産の投入エネルギーは小さくなり、エネルギー収支は改善される。そのため、単純なエネルギー収支の議論では十分でないことを示した。今後は、石油の精製・流通・販売をになう石油関連業界との利害調整や制度構築が不可避の課題となる。
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