研究課題
CD151過剰発現は腫瘍の悪性化及び転移に関与しており、これの発現抑制を図るのには、RNA interference(RNAi)が有効である。我々はまず、肺小細胞癌細胞株SBC3などにCD151のshRNA発現ベクター投与を投与したところ、CD151の遺伝子及び蛋白の発現抑制がみられた。次に担癌マウスモデルでの遺伝子治療実験を行ったところ、CD151のshRNA発現ベクター投与により、それらの腫瘍内発現が抑制され、更に標的遺伝子CD151の発現抑制がみられた。つまり、これらは、VEGF-A発現抑制による血管新生抑制と転移抑制、Wntlの発現抑制など、様々な腫瘍のプログレッションを包括的に抑制したと考えられた。Wntは分泌型シグナルであるため、このwnt発現抑制は周囲の腫瘍細胞と間質細胞へのbystander効果も考えられた。また、抗CDI51抗体HM10-8抗体を用いて直接CD151とインテグリン複合体の構成を抑制し、間接的効果でCD9及びCD82とインテグリン複合体の高発現をもたらすことにより、転移の抑制を図ることにも成功した。次年度は、更に、アデノウィルスを用いたCD9とCD82も含めたカクテル遺伝子治療も併用して行い、CD9やCD82の発現減弱腫瘍に対して、転移抑制と担癌マウスの生命予後の延長を試みる予定である。さらに、複数の遺伝子異常を持つ腫瘍遺伝細胞に対しては、単独遺伝子の治療ベクターよりも、抗体をも用いたカクテル療法の方が、個々の腫瘍細胞へ安定したベクターの導入が得られ、発現してきた蛋白もその複合体構成を妨げることにより機能を抑制し、高い抗腫瘍効果が期待できると考えられる。このカクテル遺伝子治療が確立されれば、進行期肺癌の癌病巣での封じ込めが可能となり、en blocに原発巣を拡大切除することが可能になると考えられる。
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