研究課題
基盤研究(B)
歯周炎が全身に及ぼす影響を解明するため、歯周病原細菌による感染特性、歯周炎患者における全身的な炎症状態及び歯周治療の及ぼす効果、ネステッド・ケース・コントロール研究において歯周病原細菌感染と動脈硬化性疾患の関連について検討した。また、マウス歯周炎モデルを作成し、歯周病原細菌、Porphyromonas gingivalis感染の各種臓器・組織における動脈硬化関連遺伝子発現に及ぼす影響についても解析した。その結果、P.gingivalisには宿主の免疫監視機構を攪乱する活性があることが示された。歯周炎患者では血清CRP値、IL-6のレベルが健常人のそれと比較して有意に高く、治療により低下することが明らかになった。ネステッド・ケース・コントロール研究では多重ロジスティック回帰分析でその他のリスク因子を補正してもP.gingivalisに対する抗体価と動脈硬化性疾患の間に有意な相関があることが示された。これらの結果から、歯周疾患が動脈硬化症と関連することが強く示唆された。関連の背景にある生物学的メカニズムを明らかにするための動物実験では、ヒト歯周炎患者でみられたCRP, IL-6の上昇はもとより、歯周病原細菌の感染により血管・肝臓において炎症、脂質代謝、メタボリックシンドロームに関連する遺伝子が、いずれも動脈硬化症の発症・進展を促進するような変動を示すことが明らかになった。しかしながら、感染期間が短い場合には動脈硬化病変ができなかったことから、発症の促進、すでにできている病変の進行に関わることが示唆された。
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