中国のメディアの影響に注目した従来の研究の多くは、暗黙のうちに中国が「欧米化」することを前提としていた。つまり、欧米的な価値観がメディアによってどのように強まるのか、という視点からの研究がほとんどであったといえる。しかし、現在の中国の文化政策は欧米化とは反対の方向を目指しているように見える。アニメの国産化を目標とした政策の発表は、その一つの例である。したがって中国における規制された状况下でのメディア利用が中国人の意識やライフスタイルにどのような影響を与えているのかを検証する必要がある。本研究は、メディア利用が新しい意識やライフスタイルをたらしているのか、また新しい変化をもたらすための条件は何かという点を解明するため調査を実施したいと考えている。まだ一年目であるので具体的な研究成果はあげていないが、この研究目的を達成するため、次年度以降のフィールド調査の準備している。平成19年度は関連文献の収集を行ない、現地での文献収集と調査の実施条件を確認するため上海市を訪問した。違法コピーソフトが大量に流通している状況は把握したが、さらに上海市で市民のメディア利用と意識に関する調査を平成20年度以降に計画している。また、本テーマに関連する研究として、中国の反日意識に関する既存の調査データの分析を行い、論文を執筆した。この論文では、中国政府の愛国主義宣伝が必ずしも期待した効果を上げていないことを検証している。
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