中国政府は国内のコンテンツ産業を育成し、中国のソフトパワーを高めることを目ざして、アニメの国産化を推進している。そのため、中国では2006年から外国アニメの輸入をほぼ停止し、放送される外国アニメの数は激減している。本年度は、このような政策下における中国人のアニメの利用実態を、筆者が2008年に広州市で街頭調査によって実施したアンケート調査から分析した。アンケート調査の結果から、外国アニメへの規制が強化される中で、インターネットを通して目本アニメに接触している中国のアニメファンの独特な利用状況が浮き彫りになった。一部の日本アニメ番組は中国では正式に放送されていないにもかかわらず、日本以上の高い人気を博していた。そうした視聴者の多くはインターネットで日本アニメに接触していた。ロジスティック回帰分析の結果では、日本アニメの好みに対して年齢が低いことと学歴が高いことが有意に効いていた。学歴が高いという点は、過去の日本コンテンツの利用者とは異なる特徴である。また、中国アニメは、幼児向けで一定の競争力はあったが、キャラクターの魅力では劣っていた。一方、日本アニメの愛好者が日本製品に対してポジティブなイメージを持つという、ソフトパワー論が想定する方向の効果は支持されなかった。また、日本アニメと中国アニメの代表作を内容分析で比較したところ、中国アニメの方が架空の場を想定したものが多く、日本は現実的な場を想定したものが多かった。これは、中国アニメが低年齢層の子供をターゲットとしでいるためと考えられる。本研究成果は3月に北京の中央民族大学で発表したほか、学会誌にも投稿し審査を経て既に掲載されている。
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