学習システム自身がユーザ自身やユーザ周囲の状況(コンテキスト)を的確に把握し、コンテキストに応じて学習コンテンツの提示内容や提示手法を動的に変更することで移動中の連続した学習を支援する、適応的かつ連続的な学習支援システムを対象とした研究開発を行う。 平成19年度は、(1)学習に利用する入出力機器の選定、(2)認識すべきユーザコンテキストの決定、(3)決定したユーザコンテキストの識別器の設計と実装、を行った。 (1)学習に利用する入出力機器の選定 学習コンテンツとして外国語の聴解力テストを選択し、通勤・通学時に聴解力テストを行うために必要な入出力機器を選定した。 (2)認識すべきユーザコンテキストの決定 利用可能な入出力機器の違いから認識すべきコンテキストを決定した。通勤・通学の途中のユーザの身体状態として、「座位」「立位」「歩く」「走る」「自転車をこぐ」の5状態を想定し、これを大腿部の加速度で識別することとした。また、立位の場合の場所として、「踏み切りや信号機の手前」、「駅のホーム」、「電車の中」の3状態を想定し、これを肩に搭載した超音波式距離センサにより識別することとした。また、電車の中の混雑度として「空いている」「混んでいる」の2状態を想定し、これを二酸化炭素センサにより識別することとした。 (3)決定したユーザコンテキストの識別器の設計と実装 ユーザの運動状態を実際に計測して認識対象としたユーザコンテキストの認識手法を検討した。本研究では、ユーザにセンサを装着し計測ノイズの影響は大きくないと考えられるため、短時間フーリエ変換(Short-Term Fourier Transform: STFT)を前処理として用いた。センサから取得したデータをフーリエ変換することによりデータの各周波数における振幅がスペクトルのパワーに変わり、変換する前よりデータの特徴が顕著に現れ、次の段階である識別器での認識率を向上させることができた。パターン認識手法としては、高い認識率と優れた汎化能力を兼ね備えているため、Support Vector Machineを用いた。最終的に、90%程度の高い認識率を持つ識別器を実現した。
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