研究概要 |
クックチルによる煮物調理条件を調べる第1段階のモデルとして,ジャガイモを塩水中に入れ,鍋とガスコンロを用いた従来型加熱法(以後鍋と略)とスチームコンベクションオーブン(以後SCと略)を用いた加熱法で煮物を調製し,イモへの塩分浸透と煮汁の塩分量の変化を調査した。ジャガイモは,メークインを用いた。皮をむき,2cm角に切ったジャガイモ100gと0.5%または1.0%食塩水で加熱した。鍋は沸騰するまで強火,それ以後は液温が95℃以上になるように火力を調製し,20分加熱を行った。SC加熱はスチームモードで庫内温を120℃とし,20分間加熱した。塩分量の測定は,煮汁はそのまま,ジャガイモはホモジナイザーを用いて脱塩水中で磨砕し,遠心後上澄み液を試料とし,モール法で行った。 0.5%,1.0%食塩水の鍋加熱ではジャガイモの塩分濃度はそれぞれ0.4±0.02%,0.7±0.03%であった。一方,SC加熱のそれは,0.3±0.01%,0.5±0.00%であった。調味液の塩分量は,鍋加熱ではそれぞれ0.9±0.08%,1.40±0.09%,SC加熱では0.6±0.01%,1.13±0.002%であった。鍋加熱は,SC加熱に比べ調味液の塩分量が高くなっていた。調理後の調味液量は,鍋では179±34ml減少していたのに対し,SCでは5±2.7mlの減少であった。加熱中の水分蒸発は,鍋の方が明らかに大きかった。このため,ジャガイモ中の塩分量はSCよりも鍋で高かったと考えられる。 これらの結果から,クックサーブで提供する場合,鍋加熱とSC加熱で仕上がりの塩分量を同等にしようとする場合,鍋加熱よりSC加熱の方が調味液濃度を高くする必要があるとわかった。また,SCを用いて種々の異なった濃度の塩水でジャガイモを加熱し,その塩分量との相関を調べたところ,y=0.412x+0.0476(R=0.9932)の式が得られた。この式からSC加熱する場合,鍋加熱と同じ塩分量にするには,鍋調理の1.5倍の濃度が必要であることがわかった。
|