研究概要 |
研究初年度に当たる本年度は,まず,データベース化する売立目録の候補100冊の選定を行った。選定に際しては,売立荷主および,そのコレクションの重要度,当該の売立に対する当時の世評の高さ,高額落札作品の多さ,現在伝存する著名作品の存在などの基準を指標とし,当該100冊を通じて,大正から昭和前期の日本における売立の歴史が概観できるよう配慮した。 これに続いて,収録作品のデジタルデータの作製,テキストデータの入力作業に着手し,年度末までに,売立目録40冊強,収録作品12,000件余について,作品のデジタル画像化を実施した。また,これと並行して,データベースを構成するテキストデータの項目の選定を実施,表計算ソフトを用いたテキストデータ入力からデータベースソフトへのインポート,画像データの貼り付け等,データベース構築の設計を行った。 一方,入札会の歴史や関係人物についての調査研究では,大正期以前を中心に,高橋箒庵『近世道具移動史』,『東都茶会記』,『万象録』などの文献に,入札会を報道する新聞,雑誌記事などを加え,各入札会の状況,各作品の落札価格,作品の売主、買主、札元の人物,関連作品の茶会や展示での使用に関するエピソード等の把握と整理に努め,それらのデータをデータベースに反映するための準備作業を行った。また,高橋の著書などで語られる人物やエピソード等は,益田鈍翁周辺の政財界人や数寄者を中心とするものであることから,それら以外の人物やエピソードに関しても,近代日本経済史関係の文献等を活用して把握と整理を試みた。
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