研究概要 |
プランタン=モレトゥス博物館秘蔵の、グルネー嬢による加筆・訂正の施された『エセー』(1595)を二度にわたって詳細に調査して、100個所以上の訂正個所を確認した上で、写真撮影も行うことができたのは大きな成果といえる。この知見の一部は、下記『エセー』の翻訳に反映されている。16世紀にヨーロッパで流行した「俚諺集成」というジャンルに注目して、上記博物館で調査を行い、Fr.GOEDTHALS, Proverbes ancien flemengs et francois (Plantin, 1568)と題された俚諺辞典のなかで、申請者の専門であるフランソワ・ラブレー作品への言及が、ことわざの典拠として明記されている事実を発見した。小なりといえども、「ラブレー学」における新発見であって、誇っていいかと思われる。この発見については、2010年夏に東京で開催される「ブリューゲル版画展」のカタログに論文を掲載する(英文も)。ラブレーの翻訳に関しては、詳細な注を添えた翻訳を2点、筑摩書房より刊行することができた。『第三の書』(2007)、『第四の書』(2009)である。同じくモンテーニュについても、『エセー2』(2007)、『エセー3』(2008)と2点の翻訳を白水社より刊行し、大いに好評を博している。2005年にプランタン=モレトゥス博物館は「世界文化遺産」に指定されたのであるから、今後は、そこに収蔵されている貴重な資史料にも少しずつスポットライトが当てられていくことが期待される。申請者は、この博物館の価値を認識させるべく、積極的に啓蒙活動にも従事していて、たとえば、2007年8月にTBSテレビで放映された《世界遺産》「プランタン=モレトゥスの家屋・工房・博物館複合体」という番組の監修もつとめることになった。
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