1、研究内容:本研究は、帝国主義の時代にあって、イギリスがインドに政治的・商業的に進出する過程で、軍人、行政官、そして学者がインド及びその周辺地域を調査し、ジャーナリストが報道し、作家が文学作品に作り上げることで、如何にインドとその周辺の文化・風土を英語の言説に取り込んでいったかを、それらの地域を舞台にしたイギリス文学を中心に、探検記、旅行記、最近の研究書をもとに、分析し考察を行った。具体的には、1857年のインドの反乱(セポイの乱)の資料と、19世紀末から20世紀初頭にかけての、イギリス人による北インドからチベットにわたる探検・調査の資料を収集し、分析を行った。 2、意義:19世紀から20世紀にかけてのイギリスによるインド統治、そしてその周辺地域への探検・調査、それらにもとづいた経済・軍事進出は、支配地を単に搾取や隷属化することではなく、一方では、それらの地域を「近代化」するプロセスであった。非欧米地域を近代化する政策、プロセスを研究することは「西欧近代」の本質の理解につながるのである。 3、重要性;19世紀のイギリスのインド統治政策は、今日のいわゆる「グローバリゼーション」の基礎となるものであった。支配地域を「近代化」することによって、イギリスを中心とする経済、金融、外交、そして文化の世界システムに取り込んでいくプロセスである。したがって、本研究は、現代の世界システムの本質を知るうえで、非常に重要である。
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