1、研究内容:本研究は、イギリスがインドを植民地化し、さらにインド以東に軍事的、外交的、そして商業的に勢力範囲を拡張する過程で、軍人、行政官、そして学者がインドおよびその周辺地域を調査し、ジャーナリストが報道し、作家が文学作品に作り上げることで、いかにインド以東の文化・風土を英語の言説に取り込んでいったかを分析し、考察を行うものである。平成19年度は、イギリスの支配下において、インド人が近代的なナショナリズムをもつに至る過程と、そしてそのナショナリズムの高まりが1885年のインド国民会議派というインド入の政党を生み出し、それがインド独立運動の原動力になっていく過程を、イギリス人作家ポール・スコットの小説を中心に分析した。 2、意義;最近の研究においては、19世紀から20世紀にかけてのイギリスによるインド植民地政策は、経済的搾取やインド人兵士の徴用という負のイメージが強調されるが、英領インドにおける社会制度の「近代化」や、西洋的な知識人を生み出した面も否定できない。それらの調査によって、1947年に独立したインドの本質を理解できるのである。 3、重要性:多くのポストコロニアル研究においては、植民地政策を断罪することを研究の目的にしている場合が多いが、実際には、非西欧諸国の近代化は、「西洋化」されたものを逆に利用することによって、近代国家に移行していったのである。したがって、西洋化と近代化の関係を分析する本研究は、ポストコロニアル状況の今日世界の本質を知る上で非常に重要である。
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