都市の「居住空間」とジェンダーとの関係を明らかにするために、住宅開発と地域形成過程で組み込まれたジェンダー関係に関する研究を進めた。都市は人々が日常生活を営む単なる入れ物ではなく、行為主体として活動し、社会的・経済的・文化的変化が生み出される場所である。事例のひとつとして、前年までの那覇新都心の開発の調査に続き、那覇における女性たちの地位の問題について検討した。沖縄の女性たちの生活空間を示す特徴のひとつとして保護施設に注目し、それをめぐる動向を検討した。1972年にうるま婦人寮が要保護女性のために建設された。この年は沖縄の本土復帰の年であり、当初この寮が対象とした女性の中心は買売春を行っていた人々であった。沖縄の日本返還にあたり、問題となったのが買売春の対策であった。新聞記事によると、対策を要する問題点として、業者の転廃業、売春婦の保護・更正、前借金、今後の取締などが挙げられている。うるま寮はこの視点から設置されたものである。現在この施設は、配偶者暴力などによる要保護女性が12名入居している。1972年当時81名であった定員は現在では40名となっている。 さらに横須賀の女性たちと生活空間に関する調査を進めている。海軍基地のあった横須賀が1945年にアメリカに接収されると、横須賀には特殊慰安施設協会が設立された。地域の居住者たちがこうした施設の設置に対して反対運動を展開するようになるのが1950年ごろからである。1951年には風紀取締条例が制定され、52年にはPTAが中心となり横須賀子どもを守る会が結成された。 「居住空間」を築く際にキーワードとなるのが女性や子どもの保護である。異なる対象でありながら、弱者と位置づけることでまとめられている。一方で、女性を二分化し、排除される対象を生み出すことで、居住者の結束を固め「居住空間」を築くという構造がみられるのである。
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