研究概要 |
研究期間の3年目に当たる本年度は、これまで不十分であった当課題関連文献の収集を集中的に行い、図書の購入に一定の予算を費やした。また文書史料に関しては、昨年度のオスマン帝国側史料に引き続いて、18世紀末以降本格的にワラキア・モルドヴァに進出したフランス側の史料を収集すべく、2010年2月にパリのフランス外務省外交文書館(Archives des affaires etrangeres)にて、約2週間の調査と収集を行った。前者については、西欧国際体系に関する理論的な研究と、18世紀後半から19世起前半にかけての西欧諸国・ロシア・オスマン帝国間の政治外交関係に関連する先行研究を中心に参照し、当研究課題の背景に関する知識をさらに深めることが出米た。また後者については、フランスのモルドヴァ領事の本国宛ての報告(Correspondance consulaire et commercial 1793-1901, Jassy)を1812年まで調査し、フランスの対ドナウ二公国政策を研究する上で重要な一次史料を得ることが出来たが、時間と予算の関係上、駐ブカレストの領事報告を調査・収集することは出来ず、今後に持ち越しとなった。この史料の本格的な分析はこれからであるが、これまでの研究の結果、本課題の理解のためには、ワラキアとモルドヴァのみならず、黒海周辺地域という広い空間においる西欧諸国・ロシア・オスマン帝国のせめぎ合いの過程を明らかにする必要があることが、次第にわかって来た。そのため今年度は、黒海周辺地域の一部としてのワラキア・モルドヴァという観点を交えた成果の発表を行い、イスタンブルでの国際ワークショップでの報告や論文の発表という形で、当研究の成果の中間報告を行うことが出来た。
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