本研究では、ケアに関わる非専門職である福祉ボランティアに着目し、彼らが各々のケア実践に携わる場面において、そこで生じる心理的・社会的諸課題にいかに対処しているのかについて観察するとともに、適用可能な新たな試みを提案し、その効果について検討する。 具体的には、(1)電話相談ボランティアが直面する困難さとそのサポート体制の現状について聞き取り調査を通して把握するとともに、(2)専門家のスーパーバイズによらない「ケアする人のケア」の手法として、ナラティヴ・セラピーの一潮流として位置づけられる「リフレクティング・プロセス」について理論的吟味を踏まえ、現場での実践の試みを参与観察し、その効果を確認するとともに、そのさらなる応用可能性について具体的に検討することを目指す。 今年度は、本研究の第二年度目として、(1)「チャイルドラインびんご」におけるリフレクティング・プロセス研修を組み込んだアクション・リサーチの実施、(2)諸団体の電話相談ボランティアに対するサポート状況調査の継続、(3)先行研究に関する文献・資料収集の継続、(4)リフレクティング・プロセスに関する関連諸領域における学際的知見の集約、の大きく四点を行った。特に(4)に関しては、関連諸領域の研究者を交えた研究会を定期的に重ね、その成果として、矢原隆行・田代順編『ナラティヴからコミュニケーションヘーリフレクティング・プロセスの実践』(弘文堂)を刊行した。
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