本研究では、ケアに関わる非専門職である福祉ボランティアに着目し、彼らが各々のケア実践に携わる場面において、そこで生じる心理的・社会的諸課題にいかに対処しているのかについて観察するとともに、適用可能な新たな試みを提案し、その効果について検討する。具体的には、(1)電話相談ボランティアが直面する困難さとそのサポート体制の現状について聞き取り調査を通して把握するとともに、(2)専門家のスーパーバイズによらない「ケアする人のケア」の手法として、ナラティヴ・セラピーの一潮流として位置づけられる「リフレクティング・プロセス」について理論的吟味を踏まえ、現場での実践の試みを参与観察し、その効果を確認するとともに、そのさらなる応用可能性について具体的に検討することを目指す。今年度は、本研究の最終年度として、(1)「チャイルドラインびんご」におけるリフレクティング・プロセスをめぐるこれまでの実践研究の取り組みを現場の実践者と研究者との協働的アクション・リサーチの形式でまとめること、(2)上記の研究成果を他地域のチャイルドラインはもとより広く電話相談にかかわる諸団体に周知し共有すること、(3)リフレクティング・プロセスの応用可能性についてさらに広範な領域において検討を進めること、の大きく三点を行った。特に(1)(2)に関しては、矢原隆行監修『電話相談ボランティアにおけるリフレクティング・プロセス応用の手引き-チャイルドラインびんごにおける実践と研究から』を共同でまとめ、全国の電話相談組織に配布中である。また、その理論的可能性については、野口裕二編『ナラティヴ・アプローチ』において検討をすすめた。
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